10X CCO 中澤理香が語るPodcastの魅力。 “温度感” が伝わるPodcastは、複雑な話題の共有やファンづくりに効果的

企業のオウンドポッドキャスト制作を手掛けるPitPaは、新しくポッドキャスト番組『オウンドポッドキャストインタビューbyPitPa』をスタートしました。こちらの番組では、企業ポッドキャスト配信者をゲストに招き、様々なポッドキャストの制作裏話を聞くことで、新しくポッドキャストで発信をしたいと思う皆様に有益な情報をお届けしています。また、PitPaブログでも、その内容を一部編集して公開してまいります。

第一回のゲストは、株式会社10X CCOの中澤理香さん。約1年前にスタートしたオウンドポッドキャスト『10X.fm』 は、スタートアップ企業が目指したいポッドキャストとして、PitPaでもよく名前が挙がる人気ポッドキャストです。また、10Xといえば、代表の矢本さんが運営する『Zero Topic』や中澤さん本人が運営する『やいやいラジオ』など、個人の発信も活発。

1PRの専門家でもある中澤さんが思うポッドキャストの魅力から、企業ポッドキャストと個人ポッドキャストをどのように使い分けて運営しているのか、運営方法の詳細などお伺いしました。(聞き手:PitPa プロデューサー 富山)

※現在10Xさんのオウンドポッドキャスト配信をPitPaがサポートしています。

ポッドキャストの魅力は、複雑な話も “温度感” とともに伝わること

——10Xさんは、情報発信がすごく活発ですよね。

社長の矢本も含めて、弊社はすごく情報発信を大事にしています。というのも、短期ではなく中長期で会社を大きくしていく上で、10Xのミッションや有り様に共感していただきながら、仲間を増やしていくのがすごく大事だと思っていて。

転職活動中の方にこちらから声をかけるだけでなく、10Xの情報を元から知っていただいて、その方が将来転職しようと思ったタイミングで10Xを思い出していただきたいと思っているんです。

そのために、短期ではなくて中長期に向けたファンづくりはすごく大事だと思っているんですね。

——そういった方針のもと、ブログやプレスリリースに加えて、ポッドキャストも更新されていらっしゃるんですね。ポッドキャストは、どんな人をターゲットに配信していますか?

何かしら仕事の参考になると思って聞いていただける方の他に、10Xに対して興味を持っていただいたりとか、もしくは、将来的に働く可能性を検討している方が聞いている想定をしています。

スタートアップって、代表や役員のイメージが強くなりがちだと思うんですけど、それだけじゃなくて、色んなバックグラウンドの人が色んな仕事をしていることや、社員個人の人となりが伝わるようにしたいと思っていて。

話してもらう社員には「選考中に聞いている人が多い」ということを伝えておいて、「○○さんと似たようなキャリアの人が、共感できるポイントを話してほしい」「等身大の目線で思ったことを話してほしい」という風にお願いしてますね。

——ポッドキャストで発信するメリットはどういったところにあると思いますか。

様々な情報発信チャンネルがある中でも、人柄だったり、温度感、空気感が伝わりやすいところかなと思っています。そういった特徴もあって、距離感が近いところも魅力ですね。

テキストって、どうしてもドヤ感が出てしまうというか、カッコつけた感じになりやすいと思うんです。例えば「このプロジェクトはこうやってこんな成果が出ました!」という記事は、広く伝えやすい一方で、どれだけ表現に気をつけても、若干 “憧れ”の対象に見えてしまうと思うんですけど、音声だと、同じ話題でも、もう少し友達の話感覚で聞いていただける。それは他のメディアではできない良さだと思っているんですよね。

それから、複雑な話もそのまま伝えられるのも魅力ですね。前後の話の文脈も含めて聞いていただけるので、書き手の解釈が挟まることもなければ、一部だけ切り取られて誤解を生むこともない。やっぱり今は、SNSで発信する温度感はすごく難しくなっているので、前後のコンテクストを含めて伝えられるのはすごくメリットだなと思いますね。

——たしかにテキストだと棘があることも、音声で話すと逆に共感を持てるという話は、他の配信者からも聞きますね。

直近だと、弊社の投資家をお呼びして、社員向けに話してもらった「不況下でスタートアップはどう戦っていくべきか」という話をポッドキャストでも公開したんですね。これにはすごく意図があって。市況が厳しくなってきた中で「スタートアップに転職って大丈夫かな」と不安を感じる方もいるだろうと考え、市況の解説と10Xの状況をしっかりお伝えしたかったんです。

ただ、テキストにすると結構ニュアンスが難しい話だったので、「背景や温度感をそのまま伝えられるポッドキャストで話すのが一番いいだろう」となり、音声で配信することにしました。

——確かに、会話の流れや声のテンションとともに聞いていると、「不安もあるけれど明るい未来が待っているよ」というニュアンスがすごく伝わっていた気がします。

ありがとうございます。他にも音声番組のメリットで言うと、まだまだ競合も少ないとも思いますね。企業のオウンドメディアって、年々難しくなっていると思っていて。どこの会社もやっているし、Twitterで流れてきて、単発の記事が読まれたりするけれど、その記事がどこの会社の情報発信なのか、イメージが薄いこともあると思うんですね。

Twitterも含めて、画面を見ている時間の取り合いってすごく難しいと思うんですけど、音声を聞いている時間は意外とあいているので。みんな毎日散歩とか通勤、家事をしながら耳があいている時間があって、そこで情報を聞いていただけるなら、それって特別感のあるチャンネルになると思いますね。

——Twitterだと色んな情報を流し読みしていくことも多いですが、ポッドキャストだとずっと一つの番組を聞くことになりますもんね。

雑談を含んでいる内容でも、長く聞いていただけるので、深いつながりにもなっていきますよね。ポッドキャストのリスナーの方々って、結構生活習慣の中に、「音声番組を聞く」というのが組み込まれている方が多いのかなと思います。

なので、一回番組を購読していただくと、新しいエピソードが配信されたらその後もなんとなく習慣的に聞いていただきやすいと思っていて、徐々に10Xについての理解を深めていっていただくことも可能なのかなと。

——それはよくわかりますね。僕も聞いていて、「新しい人入ったんだ」とか「佐藤さんが二人いて、しかも同じ時期に入ったんだ」とか、そんなことまで知っています。

ありがとうございます(笑)弊社も、社員規模が70人くらいになってきたので、お互い話す機会を持ちにくい人も出てきました。でも、ポッドキャストを聞いていると、自然に社員のことを知るきっかけにもなるので、結構社内でも聞かれていますね。

——そうか。今はリモートワーク中心でもありますし、入社したばかりだと、なかなか「どんな人だろう」というのがわからないこともありそうですよね。

そうですね。なので新入社員の紹介エピソードは、パーソナルな面やその人のキャリアについても聞いています。そうすると、理解が深まりますし、その後の話すきっかけにもなるので。もっと規模が大きい会社だと、社内コミュニケーションとしてのメリットもあるのかもしれませんね。

まずは定期的に発信し続けることが大切。そのために制作プロセスはミニマム化

——次に制作プロセスについて大事にしていることはありますか?

これは個人でやっているポッドキャストも同じなんですが、極力運営コストを下げるというのを一番大事にしています。

作るコストがかなり手軽なのがポッドキャストの魅力だとも思っていて。社員ブログは作成しようとすると腰が重くなってしまいますが、ポッドキャストであれば、1時間ほど時間を取れば発信できるのがすごくメリットだと思っています。

そういう方針もあって、編集にすごく時間がかかっちゃうと公開するのがすごく大変になってしまうので、音声が少し犠牲になっても、とにかく制作プロセスは簡易化していますね。

——収録は、毎回PRチームが仕切って調整して収録しているんですか。

管理はしているんですが、毎回ではないです。一応、ブログや他のSNSと合わせてPRチームがポッドキャストも管理しているので、収録に関しても、出演者全員がポッドキャスト収録に慣れてない場合は、収録時間として私の予定を抑えてもらうこともあります。

でも、収録方法をまとめたガイドも作ってあるので、特に毎回同席が必須ではなく「こういう感じで収録しておいてください」とお願いする形で進めています。

今となっては社員から「チームで企画して収録したので、よろしくおねがいしまーす」と音声データをもらうだけの時もあります。

——使っているサービスやルールについても教えて下さい。

基本的に収録はZencastrを使っています。本当はローカルのQuickTimeで録ったほうが音はいいんでしょうけど、保存の時にミスが起こる可能性が高かったり、ファイルが重くなったりするので、一番安定して使えるのが今の所Zencastrかなと感じていて。

10X.fmは様々な社員が出演することもあり、イヤフォンやマイクのレベルも人によってバラバラなので、環境音が人それぞれ違って編集の時に少し大変なときもあるんですけど、それも仕方ないと割り切っていますね。基本はイヤフォンをつけてくださいとお願いしているんですけど、こだわりすぎるのも大変なので、ガチガチにルール化しすぎないようにしています。

編集にかかっている時間も15分程度でしょうか。人それぞれにノイズがあったりするので、多少カバーできるかなと思ってBGMをつけている程度。Audacityというフリーソフトを使っていて、ノイズを切りつつ、最初と最後の不要な部分を切ってるくらい。本当に恥ずかしいレベルなんですけど(笑)配信もAnchorなので簡単です。ファイルをアップロードして、ちょっとした説明文を書くだけですね。

——そうすると、大変だったエピソードなんかはあんまり無いですかね。

編集も自分でやっていますし、そこまで苦労した経験はないかもしれませんね。数ヶ月更新が滞ってしまうなど、リソースの課題はあります。副業の方に音源の編集や配信をお願いするときもありますね。

ただ、私は元々ポッドキャストが好きでよく聞いていたので、無理なく運営できていますが、全くこれまで番組を聞いたことがない人だと、大変に感じる人がいるかもしれません。

——そういった場合は是非PitPaがお手伝いできるといいですね(笑)

そうですね。PitPaさんのような外部の会社に依頼する方も今後増えていくと思います。

——話す内容の企画についてはどのように考えられていますか?

ポッドキャストの企画のために会議をするのではなく、採用定例の中でアイデアが出てくる事が多いですね。例えば「来月のこのリリースに合わせて、裏側をポッドキャストで話したらどうか」とか。他にも、他の部署から「この部署のことをもっと知られてほしいんですが」という相談をもらうこともあります。

あとは、矢本の個人のポッドキャストの方でも言っていたんですが、「同じことを何度も聞かれたらポッドキャストで話して公開する」と便利ですね。例えば弊社だと、「小売店のDXプラットフォームをつくられていますけど、個別の会社のニーズに対してどうやって対応しているんですか」といった質問をよく聞かれるんです。そういった質問は「このエピソードで解説しているのでぜひ聞いてください」とすぐにポッドキャストを送ることができるのですごく便利ですね。

採用でよく聞かれることも同じです。『地方在住メンバー座談会』というエピソードもあるんですが、「地方在住なのですが10Xで働けますか」という質問が来たらそのエピソードを送っています。聞かれることに対してURL一つ送るだけで話が進むのがメリットだなと思っていて。実際に企画づくりも、採用候補者に聞かれそうな質問と回答を意識してつくっています。

——KPIは何か設定していらっしゃるんでしょうか。

後に決めていくとは思うんですが、今のところはKPIを設定していません。まずはコンスタントに情報発信できる体制をつくるというのが大事だと思っていて。それは採用ブログも同様です。

個人的には、情報発信を会社で始める時って、どういう結果がもたらされるか未知数な場合も多いと思います。最初からがっちり確からしい目標を決めるのは難しいと思うんですね。なのでまずは、例えば週に1回は発信するとか、3ヶ月に1回はブログを更新するとか、定期的に発信できる形をつくって、それが回り始めてから、改善の目標を立てていくのがいいと思っています。

——そうすると、ダッシュボードなどで定量的に結果を見ることも少ないですか?

一応ダッシュボードは見てはいますね。ただ、PitPaさんもご存知だと思うのですが、あまりエピソードごとに「これがはねた!」「これがだめだった!」という差が生まれにくいのがポッドキャストだと思うんですね。むしろ合計の登録者数を増やしていったほうが良い。ただそこも、一気に増やせる施策が特段あるわけではないので、淡々とやり続けることのほうが大切だと思っています。

それでも、反響自体は感じていて、採用チームが「候補者の方々が聞いてくれている」ということをシェアしてくれることもありますし、社員からも感想を受け取っています。

個人と企業での発信の使い分け。ポッドキャストのメリットは、長期間聞いてもらえるからこそ生まれる

——これまで、ポッドキャストのメリットや制作プロセスなどを聞いてきましたが、逆に「こういう会社はポッドキャストは向いていないかも」という企業はありますか?

これは個人的な考えですけど、正直、ポッドキャストはなかなか集客が難しいので、すでに集客チャネルがある会社さんのほうがポッドキャストを始めやすいと思いました。ポッドキャストのメインの集客方法って、SNSや、たまに他の番組とのゲスト交換をするくらいですよね。あとは、自分たちではなかなかコントロールできませんが、AppleやSpotifyにフューチャーされるとか。

その前提だとポッドキャストは、会社の中でTwitterなどのSNSをやっている人がいて、普段から発信していてフォロワーがある程度いるとか、会社自体がある程度名前が知られている会社により効果的なチャネルだと思いますね。ポッドキャストを始めたとして、少なくとも「聞いてみたいな」と思う人が100人くらいいるかな、と思えるところがやると良いのかなと思います。

知名度って「広める」と「深める」があると思うんですが、ポッドキャストは深める方の施策だと思うので、広めることを期待すると、なかなか思ったように展開できずに心が折れちゃうんじゃないかなと思いますね。

——10Xさんといえば、社員個人のTwitterがあるだけでなく、矢本さんの『Zero Topic』を筆頭に個人のポッドキャストも有名です。そういった社員の発信と企業の発信で、内容を意識して分けていらっしゃいますか?

個人と会社公式の番組のすみ分けは大事にしています。

矢本個人が2020年くらいからはじめた『Zero Topic』、実はリスナー数も10X.fmより多いですし、Appleのポッドキャストアプリ内でフィーチャーされたこともあって、ファンも多い番組なんです。

だけど、個人のポッドキャスト番組で会社アピールや「こういう人が来てほしいです!」といった採用色が強すぎると、それはそれで個人の番組の良さが失われてしまうかなと思っていて。どうしても宣伝ばっかりだと飽きちゃうじゃないですか。それもあって、新入社員紹介も、将来的なことも考えて10X.fmの方に移したんです。

やっぱり、彼の考え方やプライベート含めて面白いと思ってくださるリスナーの方は大事にしたほうが良いと思っていて。たまにネタ出しをしたり、「ここぞ」というタイミングでは「これを話してほしいです」とお願いすることもありますが、基本は自由に発信してもらっています。

——宣伝だけでなく個人の発信も大事にすることが、結果的には、採用にも良い方向につながりそうですよね。

実際に10Xのとある社員は、たまたま矢本の考え方が面白くて『Zero Topic』を聞き始め、1年以上聞いているうちに、だんだん「こういう人と仕事したら勉強になるかな」という気持ちが高まって、結果10Xを受け、転職することになった、と話していました。

矢本個人のポッドキャストリスナーを含め、実際にポッドキャストから採用できている人も結構いるんですが、特徴として “足が長い(アクションに至るまでに長期間情報に触れてくれている)”というのがありますね。

——そうすると、入社前後で齟齬もなく、カルチャーフィットもスムーズに行えそうです。

そもそも弊社では、カルチャーフィットを重要視していて、「入社前後でギャップが全然ない」と言っていただきます。

それは、入社前にほぼ全ての職種でトライアル的に一緒に働く期間を設けているのもあるんですが、情報発信をたくさんしていることも関連していると思いますね。ポッドキャストは特に、聞いていると人柄を感じるメディアなので、齟齬が生まれづらいのかなと思います。

——ポッドキャストの魅力や、活用方法がよくわかるお話をありがとうございました。最後に、何か宣伝があればお願いします。

ポッドキャストをやっている理由にもつながるのですが、採用募集中です。弊社はスーパーやドラッグストアなどの小売向けECプラットフォームをやっていまして、導入企業も増えており、プラットフォームとしても拡大しています。会社としては創業5年目。今は70人くらいの規模ですが、引き合いも多く、さらに拡大をしていくフェーズにあります。

10X 採用情報はこちらから

エンジニアやデザイナー、PdMといったプロダクト系の職種だけでなく、事業開発やコーポレート系の職種など、幅広い領域でメンバーを募集しているので、何か面白そうだなと思っていただけた方がいらっしゃいましたら、採用ページをご覧いただいたり、ポッドキャストを聞いていただけると嬉しいです!

テキスト版では公開されていない部分を含む、音声版インタビューを聞きたい方はこちらから

音声コンテンツ配信・マーケティングについてご相談お待ちしております

PitPaは、音声コンテンツの制作・配信およびデータ分析をかけ合わせ、Podcastを活用したビジネス・マーケティング・PRを支援してまいります。

現在10X様のオウンドポッドキャストのサポートも実施しております。オウンドポッドキャスト制作支援にご興味のある方は是非、フォーム等よりお問い合わせください。

また、Podcastに関する様々なトピックや運営ノウハウについては、PitPaのオウンドポッドキャスト「PitPaTalk」でもお話しておりますので、参考にしていただければ幸いです。

 

 

1件のコメント