コロナ禍で人となりが伝わりにくい今だからこそ、音声情報は採用に効く。サイボウズ デザイン&リサーチチームが手掛ける Podcastが生み出した効果とは

企業のオウンドポッドキャスト制作を手掛けるPitPaは、新しくポッドキャスト番組『オウンドポッドキャストインタビューbyPitPa』をスタートしました。こちらの番組では、企業ポッドキャスト配信者をゲストに招き、様々なポッドキャストの制作裏話を聞くことで、新しくポッドキャストで発信をしたいと思う皆様に有益な情報をお届けしています。また、PitPaブログでも、その内容を一部編集して公開してまいります。

第2回のゲストは、サイボウズ株式会社。約1年前にスタートしたオウンドポッドキャスト『Cybozu Design ポッドキャスト』 は、サイボウズデザイン&リサーチグループのメンバーが日々の活動や取り組みを雑談形式で紹介するというポッドキャスト。『Cybozu Design Podcast』を開始してから最近入社したメンバーのほぼ全員から「ポッドキャストを聞いた」という話を聞くなど、採用面での効果も出てきているそうです。

『Cybozu Design Podcast』を立ち上げた篠原さんが思うポッドキャストの魅力から、企業ポッドキャストを進めるにあたって心がけていること、運営方法の詳細などをお伺いしました。

「採用」を目的に始めた、音声コンテンツの配信

──会社全体でポッドキャストをやっている企業はありますが、チーム単位でポッドキャストをやっている企業は国内では珍しいと思います。ポッドキャストを始めた経緯は何だったのでしょうか?

ポッドキャストを始めた一番の目的は「採用」です。それこそ、ポッドキャストを始める前の2019年頃はサイボウズの社内にデザイナーやリサーチャーがいることが全く知られていなかったんです。応募してくださる人数もそこまで多くなく採用に苦戦していました。そうした状況を変えるために、まずは私たちの存在を知ってもらおう、という考えで始めました。

──デザイン&リサーチグループはnoteでも情報を積極的に発信されています。文字やテキスト、動画といった手段がある中、なぜ音声で情報を発信してみようと思ったのでしょうか?

音声コンテンツの配信を始めようと思ったのは、デザイン&リサーチグループで働く全盲のエンジニア・SUGIくんがきっかけです。彼は音で他人の感情や気持ち、その場の状況を判断している。一緒に仕事をしていくうちに音声で伝えられる情景、情報にはすごく可能性があると気づかされました。文章でチームのことを伝えるよりも、音声で伝えた方がその場の雰囲気だったり、人柄だったりといった情報をダイレクトに伝えられるのではないか。そう思い、音声コンテンツの配信を始めることにしました。

また、当時は新型コロナの感染が拡大しており、学生も就職に関して収集できる情報が少ない状況にありました。通常であれば、オフラインの会社説明会に参加し、会社の雰囲気や働く人たちの人となりなどが掴めると思うのですが、コロナ禍で全部なくなってしまった。音声コンテンツの配信はそういったものの代わりにもなった気がします。

──ひとつの部署でポッドキャストを始めるにあたって、会社のコンセンサス(合意)をとるのは大変だったのではないでしょうか?

それが全然大丈夫だったんです。「サイボウズ」という会社が少し特殊なのかもしれませんが、基本的にはやりたいことがあった場合、上長やマネージャーに「こういう目的でやりたいです」と企画の概要を伝えて、OKであれば自由にやっていいんです。そういう雰囲気が醸成されている会社なので、話をしてすぐにGOサインが出ました。

応募者数は2倍に増加、開始から半年で実感したポッドキャストの効果

──最初はどのような形でポッドキャストを始めていったのでしょうか。

最初はどういった効果があるのか見えていなかったので、「まずは試しにやってみよう」という感じでお金や人も使わずにスモールスタートで始めました。それこそ、一番最初のエピソードはiPhoneで収録しています。社内の会議室を一室押さえて、テーブルの真ん中にiPhoneを置き、ただお喋りをする。そして、編集もせずに公開しました。

最初はポッドキャストで配信するのではなく、note上に音声ファイルをアップロードする形で音声配信を始めました。それを数カ月続けていくうちに、周囲から「(音声コンテンツを)聞きました」という声を耳にするようになったんです。そこで「採用に良い効果が出そう」ということが分かり、本腰を入れてポッドキャストで配信していくことになりました。

ポッドキャストでの配信に切り替えたタイミングで少し良いマイクを使うようにするなど、配信や編集に必要な機材を揃えていきました。ただ、今も基本的に人やお金などのコストはなるべくかけないようにすることを心がけて運営しています。

──その効果はどれくらいで感じましたか?

3カ月〜半年くらいだったと思います。当初は1〜2年くらいやらないと効果は出ないのかなと思ったのですが、思っていたよりも早く反応を聞くことができて嬉しかったですね。

ポッドキャストの配信を始めてから採用面接の際に「ポッドキャストを聞きました」「ポッドキャストを聞いて応募しました」と言ってくれる人がすごく増えました。同時にnoteなどの発信を始めた背景もあるんですが、実際、オウンドメディアでの発信を始めてから応募者数も2倍になるなど数字面でも効果が出ています。最近入社したメンバーはほとんど全員ポッドキャストを聞いているそうで、中でも先日入社したUXリサーチャーは全エピソードを聞いていたみたいなんです。それを聞いたときに驚いたのと同時にポッドキャストをやっていて良かったなと思いました。

──KPIは何か設定されていたりするのでしょうか。

採用面接の際にポッドキャストを聞いたことがある人の数はカウントしていければと思っています。それ以外では、ダウンロード数などの具体的な目標は立てていません。

目標を設定してしまうと、数字を達成すること自体が目的になってしまう。もともとは採用のために、私たちのことをより多くの人に知ってもらうことを目的に始めたので、シビアに数字を追いかけないようにしています。数字面は、どのエピソードで見られているのか、noteの文字起こしがどれくらい見られたか、をあくまで目安程度に見ているくらいです。

──noteで文字起こしを公開する理由についても教えてください。

「耳の聞こえづらい人にも楽しんでもらいたい」という思いがあります。サイボウズ自体、“チームワークあふれる社会を創る”という理想を掲げていることもあり、多様な人が楽しめるようなコンテンツでありたいという思いがベースにあるんです。耳が聞こえづらい人でもポッドキャストの内容を少しでも楽しんでもらいたい。そういう思いでやっています。

今後は社外のデザイナーやリサーチャーとの繋がりを作っていきたい

──ポッドキャストを聞いて入社してくる人の特徴は何かありますか?

会社の文化に共感して入社してくれる、という共通点はあります。実際、ポッドキャストを聞いて入社したというメンバーに話を聞いてみたら、事前にポッドキャストを聞いておくことでチームの雰囲気も把握できており、入社する際のコミュニケーションの不安はなかった、ということを教えてくれました。もともとは採用目的で始めた取り組みですが、実は入社に至るまでのオンボーディング的な視点でも役に立つな、と思いました。

───ポッドキャストはどのような役割分担で運用されていますか?

役割などは全く決まっていないんです。基本的にはネタがあれば誰でも自由にポッドキャストを収録して配信していい、という決まりになっています。

企画に関しては、デザイン&リサーチグループで週に1回の定例会で決めています。そこで業務の進捗共有をするのですが、定例会で話題にあがったものの中でポッドキャストのネタとして面白そうなものがあったら、その話題をもとに収録することにしています。また、持ち込みネタで個別に連絡がきて、そこから拾って企画に進めることもあります。

──『Cybozu Design ポッドキャスト』は社内の人も聞いているのでしょうか?

他部署の人も聞いてくれているみたいです。コロナ禍の影響もあり、リアルの場で会う機会が減ってしまったので、「他部署の人たちが何をやっているのかを知りたい」という人たちが聞いてくれています。また、とある会社の人がポッドキャストを聞いてくれていて、「うちのデザイナーと対談しませんか?」というお誘いが来て、実現したこともあります。

──運営していて大変だと感じることはありますか?

収録して編集する作業は慣れるまで大変でしたね。Adobe Auditionを使って編集しているのですが、最初の頃は使い方すらわからなかったので、使い方を調べるところからスタートしました。今はもう慣れたので大丈夫ですが、やはり自分一人だけでは継続していくのが難しいので、いかに仲間を作っていくかが大事だなと思います。現在は3人体制で収録や編集などの作業を行っています。

──音声コンテンツをつくっていく上でのこだわりを教えてください。

内容に関しては良く見せようとしすぎず、“ありのまま”を伝えるようにしています。また、編集に関しては聞き取りやすい音声になっているかどうかは気をつけています。

──最後に今後どんなことをやっていきたいですか?

社外のゲストを招いて、話を聞いていく回をもっと増やしていけたらと思っています。あとは『Cybozu Design Podcast』 を通して、デザイナーやリサーチャーとの繋がりを作っていけたら嬉しいな、と思います。

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