採用・広報目的で始めたポッドキャストがブランディングツールに。カミナシが「SaaS」と「テクノロジー」に特化した音声メディアを立ち上げたワケ


企業のオウンドポッドキャスト制作を手掛けるPitPaは、ポッドキャスト番組『オウンドポッドキャストインタビューbyPitPa』を運営しています。こちらの番組では、企業ポッドキャスト配信者をゲストに招き、様々なポッドキャストの制作裏話を聞くことで、ポッドキャストでの発信を始めたいと思う皆様に有益な情報をお届けしています。また、PitPaブログでも、その内容を一部編集して公開してまいります。

第4回のゲストは、株式会社カミナシ。PCを持たずに現場で働く「ノンデスクワーカー」の業務のペーパーレス化を目指す同社は、2021年5月にオウンドポッドキャスト『カミナシSaaS FM』をスタートしました。

『カミナシSaaS FM』は、SaaSや現場向けのテクノロジーに特化したメディアで、運営はCEOの諸岡さんと、COOで同番組を立ち上げた河内さんの二人体制で運営。スタートから1年半ほど経った現在は、SaaSやスタートアップ界隈の経営層がこぞって聞く人気番組に成長し、ブランディングや採用面での効果も実感されているそうです。

そんな『カミナシSaaS FM』を立ち上げた河内さんに番組を始めた経緯や、企業ポッドキャストの活かし方、運営方法の詳細などをお聞きしました。

まずはカミナシを知らない人にも面白い番組を。ポッドキャスト番組立ち上げへ

――『カミナシSaaS FM』をはじめようと思った目的やきっかけを教えてください。

ポッドキャストを採用・広報のために運用したいと考えたからです。その頃はシリーズAの資金調達を終えた頃で、今後どうやって採用・広報を行っていくかを考えていたタイミングでした。

私やCEOの諸岡、HRの担当者の間では「ポッドキャストっておもしろいよね」という前提が共有されていましたし、僕たちの会社のカルチャーにある「β版マインド」というバリューでも、「不可逆でない意思決定はまずやってみよう」という価値観があるので、うまくいかなかったらやめればいいくらいの感覚で始めました。実際には3~5ヵ月ほどして、採用候補者の方やSNS上で「聞きました」という反応が出始めて、手ごたえを感じて今に至るのですが。

――音声メディアであるポッドキャストと、noteやYouTubeなどのメディアとの違いや、すみわけについてはどうお考えですか?

まず、ポッドキャストは他のどのメディアよりも収録の負担が少なく、気軽に更新しやすいメリットがあります。音声の編集を外注していて作業コストはほぼゼロですし、費用もそれほどかかっていません。

また、音声だと話者の雰囲気が伝わりやすいことも魅力に感じています。僕とCEOの諸岡の対談や、社内のメンバーをインタビューする企画など、カミナシの雰囲気を知ってもらいたい企画のときにはポッドキャストを使うようにしていますね。

それから、家事や育児、散歩の間に“ながら聞き”できる手軽さもいいですよね。社内には子育て中のメンバーも多いので、そうした音声コンテンツの良さを理解してくれる人が周囲に多かったのもポッドキャストを始めた理由の一つかなと思います。

――採用・広報を目的とした番組でありながら、SaaSや現場向けのテクノロジーに特化したのはなぜですか?

理由は2つあるんですけれども、1つは競合が少なく、差別化しやすかったことです。SaaSというテーマに特化した番組って、当時は前田ヒロさんのPodcasくらいしかなかったんですね。前田さんのポッドキャストもVCの視点からの発信で、スタートアップの立ち位置からSaaSについて具体的に発信している番組がほかになかったので、そうした情報を発信していけば興味を持ってもらいやすいんじゃないかと思いました。

また、当時の知名度を考えると、カミナシの社内の雰囲気やメンバーに興味を持ってくれる方が少ないんじゃないかなと考えたことも理由です。弊社は今でこそ、いろいろなメディアで取り上げていただく機会が増えてきてはいるんですけれども、当時はほとんど知られていないスタートアップだったので。

まずはカミナシについて知らない人も含めておもしろいと思っていただけるきっかけをつくるつもりで、番組を始めました。

「SaaSといえばカミナシ」が浸透、採用・ブランディングツールに

――番組のターゲットは、やはり採用候補者なのでしょうか?

当初は採用・広報目的で始めたのですが、現在はSaaSやスタートアップ界隈の経営層のリスナーの割合が高くなっています。回を重ねるうちに採用と関係ない文脈で興味を持ってくれるスタートアップやテック界隈の方が増えてきたので、途中から「コンテンツとしておもしろそうだったらやってみよう」という方向にシフトしたんです。

ポッドキャストを通じてSaaSやスタートアップ界隈の経営層の方とつながれたことで、弊社のイベントにご登壇いただけることもありましたし、結果的にはメリットは大きかったですね。

スタートアップ界隈の方で「SaaSに興味があったら、前田ヒロさんのポッドキャストと『カミナシSaaS FM』を聞いておけば間違いない」といろいろな方にオススメしてくださっている方もいて、カミナシのブランディングツールとしても活用できていると感じています。

――それでは、採用ツールとしてはあまり機能していないのでしょうか?

当初の想定とは違った効果が得られましたが、採用に貢献している部分もあります。

1つ目は、応募に直接つながったことです。ポッドキャスト経由で応募してきてくれる方も多く、実際に採用したケースも少なくありません。エンジニアの方も番組を聴いてくださっていますし、職種を問わず、エントリーにつながっています。

2つ目は、ポッドキャスト経由でエントリーしてくださった方の内定承諾率が上がったことです。これは音声メディアを通じて我々の会社の雰囲気が伝わり、相互理解が深まったことが要因の一つなんじゃないかなと分析しています。当初目的としていた採用にも貢献してくれる、弊社のアセットになったと感じていますね。

KPIは意識しない、作り手が楽しむことがおもしろさのコツ

――自社ポッドキャストが会社のアセットに成長した好例ですね。事前準備はやはり念入りにされているのでしょうか?

CEOの諸岡と僕の二人が企画・運営しているのですが、打ち合わせを事前にすることはないですね。アジェンダを30分~1時間くらいで簡単につくって、それをゲストの方にお送りするかたちです。

というのも、ゲストの方は僕や諸岡がおもしろいと思う人にお声かけしているかたちなので、聞きたいことを書いていくだけで、アジェンダが自然と完成してしまうというか。

逆に、自分が興味を持てないのに「採用・広報という目的を考えると、こういう会社さんがいいだろう」などと戦略的に考えると、いいコンテンツにならない気がしているので。社内のメンバーに登場してもらうときは、採用優先度が高いポジションのメンバーに出てもらえるよう意識することはありますが、そこでもおもしろい話になるかどうかを第一優先に考えています。

――では、KPIもあまり意識されていないかたちでしょうか?

そうですね。再生回数やSNSでどのように拡散されているかをチェックすることはありますが、KPIは基本的に意識していません。成果や指標にこだわりすぎると、リスナーに意図が伝わっておもしろくなくなるんじゃないかと思っていて。

だから半分趣味くらいのスタンスでやっていますし、僕らが楽しむことが長く続けられる秘訣でもある気がします。

――そんな楽しい収録の中でも、大変なことってありますか?

基本的には楽しいんですけど、忙しい時期にネタが切れて1~2ヵ月更新できないときはつらいですね。広報の方から「ちょっと間が空いてますよ」とお尻を叩かれるので(笑)。

ただ、この界隈で仕事をしていると、いろいろな方と知り合う機会も多くて、知り合った方々に「今度ポッドキャストに出てくださいよ」とお声掛けすることで、ネタ切れになることも少なくなってきました。

アーカイブがズラッと並んでいる分、イチから説明しなくても「こんな感じの番組なんだ」とイメージをつかんでいただきやすくて、番組を始めた当初よりも番組出演依頼をお願いするのも楽になっている気がします。

――ありがとうございます。最後に、今後やっていきたいことを教えてください。

まずは社内のメンバーへのインタビュー企画を増やしていきたいですね。『カミナシSaaS FM』の認知度もだいぶ上がってきましたし、おもしろいコンテンツも貯まりつつあるので。

それから、番組に出たい人が挙手しやすい環境を整えられるといいなと思っています。番組に出たいと思ってくださる人はたくさんいらっしゃるのですが、なかなか直接には言ってくださらないんです。もしもゲストとしてお話してくださる方がいたら、お気軽にお声掛けいただきたいですね。

■ 株式会社カミナシ 採用情報はこちら
https://careers.kaminashi.jp/ 
■ カミナシSaaS FM に出演されたい方はこちらからDMを
https://twitter.com/yusuke_kawauchi

■この番組の音声版エピソードはこちら(前編・後編)