PitPaの新規事業、「キャリア証明書」を活用した採用支援サービスsakazukiとは? │ PitPa Talk

この記事では、株式会社PitPaの社内の様子をお伝えするオウンドポッドキャスト番組「PitPa Talk」の内容を、一部編集して掲載しています。今回は、PitPa代表の石部(@ibstty)とPRチームのりょかち(@ryokachii)が、PitPaの新規事業であるブロックチェーン技術を活用した採用支援サービス「sakazuki(サカズキ)」をテーマにお話しています。

▼音声版はこちら

「キャリア証明書」を活用した採用支援サービス「sakazuki」とは?

りょかち:今回のテーマは、ポッドキャスト事業ではなく、PitPaの新規事業である「sakazuki(サカズキ)」についてです。まず最初に、sakazukiのサービス内容について教えてもらってもいいですか。

石部:サービス内容を端的にお伝えすると、ブロックチェーン技術を活用した人材のマッチングサービスを構想しています。仕組みとしては、会社から従業員や契約社員の人たちに対して、職歴や実績に関するデータを「キャリア証明書」という形で個人に付与できるシステムを開発していて、そのデータを元に企業側が副業や転職などのスカウトを行えるような形です。

sakazukiという名前は「盃(さかずき)を交わす」の慣用句から名付けました。個人の「盃(ID)」に職歴や実績を注ぎ(紐付け)、盃を交わし合う(信頼関係を結ぶ)ことで、個人にあらゆる機会を創出したいという想いで、この名前を付けました。

▼実際の「キャリア証明書」(一例)はこちらからご覧ください
https://vcs.staging.sakazuki.xyz/career-credentials/climpedpb0003s6012je2um1h

りょかち:なるほど。個人の職歴を載せるサービスは、すでにYOUTRUSTとかWantedly、LinkedInなどがありますが、基本的には自分で書くものですよね。なので、「会社のお墨付き」の経歴を載せられるsakazukiは、情報の信頼性が高まりそうです。

ブロックチェーン技術を使っている理由は、情報の信頼性を担保することが目的ですか? 既存のWebサービスとはどのように異なるのでしょうか…?

石部:まず、誰が発行したのかという “from” と、誰が受け取ったのかという “to” の情報が明確であることが挙げられます。具体的には、fromが会社で、toが個人ですね。そして、職歴に関する情報は「個人が改ざんできない」性質を持たせることで価値が生まれるので、ブロックチェーン技術を一部利用しているという背景があります。

りょかち:なるほど。たとえば、TOEICで720点をとった人が「経歴書には800点って書いちゃえ」みたいなことができないということですよね。

石部:そうですね。企業や大学が発行した内容を個人が書き直せない仕様なので、例えば採用活動の際にリファレンスチェック的な機能も果たせるなど、第三者が信頼しやすい証明書である点が価値だと思います。

▼sakazukiについて詳しくは、こちらの概要資料をご覧ください
https://speakerdeck.com/pitpa_pr/2023nian-du-ban-kiyariazheng-ming-shu-wohuo-yong-sitacai-yong-guang-bao-zhi-yuan-sabisu-sakazuki

sakazukiを開発した背景は?

りょかち:sakazukiの開発背景としては、職歴の信頼性の部分で困ってる人がいたとか、何か具体的な課題がきっかけだったのでしょうか?

石部:現時点で、sakazukiを利用してくださっている企業様は、海外人材を積極的に採用しているという共通点があります。しかし昨今、日本の企業に就職を希望する海外人材が増えている中で、日本人の僕たちからすると彼らの学歴や職歴に関する情報が、どのくらい正しいものかってなかなか判断できないと思うんです。

りょかち:たしかに、メルカリやLINEなど日本でも有名な企業名を言われるとイメージがつきますけど、海外の企業名だと全くわからないですもんね。

石部:そうですよね。あと、FacebookなどのSNSを見ると共通の友人がいたりするので、なんとなく信頼できると思います。なので、日本人の間ではリファレンスチェックの要素はあまり必要ないと思いますが、相手が海外出身の人材だとある程度必要になってくる。

けれども、リファレンスチェックの方法が少ないし工数もかかるので、本当はすごく能力は高い人材なのに「経歴がよくわからないので採用しない」というケースが多く起きていて、お互いに勿体無いなと。

そこで、企業のお墨付きの「キャリア証明書」を海外の人が採用活動時に提示できれば、マッチングにかかるコストを削減できるのではないかと思っているんですね。

実際に、弊社でもネパール出身のメンバーを採用していて、半期に1回、そのメンバーに「キャリア証明書」を発行しています。内容としては、詳細な業務内容と成果、企業側からの「こういうところが助かりました」というThanks Commentを記載しています。

▼sakazukiの「キャリア証明書」(デモ画面)

最近、その証明書を他の日系企業の方に提示する機会があったのですが、職歴の内容をみて「オファーを出したい」というお言葉をいただいたことがあって。PitPaという日本の小さい企業ではあるものの、ちゃんと1年ほど働いて実績を残しているという事実がわかれば、企業側も信頼でき、採用に繋がる可能性がすでに実感できていて。

こういったユースケースを日本で広げていけるのであれば、労働人口不足が懸念されている昨今の日本においては、社会的意義のある技術なのではないかと考えています。

なぜキャリア証明書に、ブロックチェーン技術を活用しているの?

りょかち:ブロックチェーンを使うことによって、色々なサービスやプラットフォームに依存せずに、個人がデータを所有できるようになるとされていますよね。ということは、PitPaのサービス以外でも「キャリア証明書」を使って職歴を証明できるということですか?

石部:そうですね。キャリア証明書には、国際技術標準化団体のW3Cが標準化しているVerifiable Credencials(以下、VC)という技術を使っているので、sakazukiがクローズしたとしても、基本的には半永久的に証明書の内容を第三者が検証できる仕組みになっています。また、オンライン上で簡単に情報の真正性を証明できるので、国内の人材サービスだけでなく、海外のサービスと連携するなど、クロスボーダーに展開できる可能性もあります。

りょかち:過去に一時期、InstagramでOpenSea上に登録したNFTを投稿するのが流行りましたけど、NFTのように、複数のサービスを跨いで使えるのがメリットということですね。LinkedInに「キャリア証明書」を連携させられたら便利そうです。

石部:そうですね。ただ、そのような世界を実現するには、僕たちだけではなくて、色々なサービス提供者が技術的な対応をして連携する必要があるので、実現にはまだまだ時間がかかりそうだとは思っていますね。

りょかち:なるほど。また夢が進んだ時に考えなきゃいけないことですね。

石部:そうですね。ただ、個人としても会社で働いた経験って唯一無二のものですし、データを所有できる世界観は嬉しいのではないかと思っています。社員1人ひとりの存在があってこそ会社の歴史があるわけで、自分が愛着を持つ会社の歴史の一部を外部に持ち出せるというのは、すごく価値があるものではないかと思っていて。

例えば、働いていたスタートアップが上場した時に、そこを卒業した人で会社に愛着があれば、「僕、社員番号が3番だったんだよね」とか言いたくなるじゃないですか(笑)。

りょかち:あー、ありますね(笑)。

石部:その気持ちと同じだと思っていて。なので、VCやブロックチェーンなどの技術を使いながら、これらの価値をどこまで社会実装できるかを仮説検証しているところですね。

りょかち:半期に1回のスパンで証明書を発行すると、その人がやったことの履歴が明確に残りますしね。

石部:そうですね。実際に、7月に弊社のメンバーにキャリア証明書を発行させてもらったのですが、弊社では評価制度はあるものの、個人の日々の業務内容を細かく記録しているわけではないので、「評価だけではわからなかったけど、思っていた以上に貢献してくれていたんだな」とか、意外な面が可視化されて面白いなと思いました。

普段の感謝の気持ちを伝える、「贈り物」としてのキャリア証明書

石部:また、業務内容や成果だけではなく、定性評価を「Thanks Comment」として一緒に記載しているのもsakazukiの特徴です。僕は普段あまり感情を出さないタイプの人間なので、改めて1人ひとりに感謝の気持ちを伝えられたのは、すごくよかったなと自分で使いながら感じました(笑)。

りょかち:もらった側も絶対嬉しいですしね。

石部:スタートアップの経営陣は忙しいはずなので、実はメンバーにすごく感謝しているのに、なかなか感謝の気持ちを伝えられていないという人も多いと思います。

その気持ちを、もらった個人がいつでも見返せるような技術仕様で送ることで、例えば10年後に「あの時、カオスな状況だったけど楽しかったな」と思い出に浸れるようなものになると、良い「贈り物」にもなるのではないかと。そういった、感謝を伝えるツールとしても普及できたら面白いですね。

りょかち:たしかに。ブロックチェーンと聞くと難しいイメージがありましたけど、今の話を聞いて卒業時の寄せ書きみたいなイメージになってきました(笑)。

石部:ああ、そうそう。似ていると思います。

りょかち:もらった側は、転職や副業などのシーンでも活用できるし、感情的にも嬉しいと。発行するだけで社内の熱量も上がりそうですね。

証明書を通じて優秀な人材を見える化し、企業の認知を形成

石部:ここまで、個人側のメリットをメインにお伝えしてきましたが、発行する企業側にも大きな価値があると思っています。

前提として、メンバーに会社を辞めてほしくないから色々な情報を外部から見えないように隠す、という姿勢は時代に見合っていないと思っていて。例えば、優秀な人材を見える化すると、転職のオファーが来てしまうリスクを考える企業もあると思いますが、すでに会社よりも個人の力が強い時代なので、辞める人はいずれ辞めると、折り合いをつけることも必要ではないかと。

という時に、キャリア証明書って「これだけ活躍している人材がうちにいますよ」と社外に見える化するものじゃないですか。

りょかち:なるほど。たしかに、そうですよね。

石部:そこで、証明書を通じて「うちはこういうイケてる人材を輩出していますよ」という事実を積極的にオープンにすることで企業認知に繋げられたら、また新しい若い優秀な人材が入ってくる可能性があると思っていて。今後、人材のオープン化は人事戦略的にも重要な施策になってくるのではないかと思っています。

僕は、PitPaを創業する前はリクルートという企業に所属していたのですが、リクルートもまさにその見せ方が上手い企業の一つです。僕自身、学生時代の時から「リクルートには優秀な人が多く集まる」という認識があって、それで新卒でリクルートを選んだという原体験もありますし、人材の見える化によって良い循環を生める企業は強いなと思いますね。

りょかち:たしかに、リクルートに入社する人は、卒業した人たちみたいになりたいという気持ちで入社を選択しているイメージがあります。すでに社内に存在する資産を見える化することで、新たな価値を作れるのは良いですね。

石部:色々な企業のホームページを見ていると、不動産業界でも社内で活躍している人の個人名を採用ページに載せていたりしますし、美容師さんもTikTokやInstagram上で個人のアカウントを作成して集客してますからね。そうした流れを踏まえると、sakazukiはいわゆるホワイトカラーの職種だけでなく、幅広い業界にも相性が良いのではないかとも考えています。

最近は、採用ページに個人の顔とプロフィールを掲載している企業も増えていますが、そのページにsakazukiのキャリア証明書を紐づけるという活用方法も増えてくると思いますね。

副業先の職歴も蓄積させ、個人のキャリア形成を加速

石部:また、従業員エンゲージメントの文脈でも企業側にメリットがあるのではないかという仮説を立てています。昨今、政府の推奨に伴い副業を解禁した企業が増えている一方で、副業をしたいけど良い副業案件に巡り会えない…という人も多いと思っていて。

という時に、所属している企業が実績を認めてくれて、かつ、その実績を元に社外で新たな機会を得ることができれば、会社に留まる理由が新しく生まれると思うんですね。副業先のキャリア情報も蓄積できれば、個人がキャリアを加速度的に設計できるようになり、結果として会社に長く留まってもらえる可能性もあるのではないかと。

りょかち:最近、副業が流行ってますよね。ただ、そもそもを辿ると、人材が保有するスキルの源泉って大手企業でみんなが教え合ってる財産だと思っていて。

今は、個人がある種無断でそれを活用している状態だけど、「キャリア証明書」によって「この活躍しているマーケターさんの職歴を辿ってみると、あの企業でこんな実績を出していたんだ」とわかるので、ギブしたものが別の形でリターンされると思うと、良い仕組みですよね。

石部:そして、もう一つ面白いなと思っているのが、おそらく企業によって「キャリア証明書」の内容にユニークさが反映されるのではないかと思っていて。企業ごとに、書き方や何をポイントとして記載するかの観点が異なると思うんですよね。

なので、基本のフォーマットは揃えつつも、企業の色が見える化されて、「この会社のキャリア証明書ってすごくユニーク!」といった事例が出てくると面白そうです(笑)。そうした動きが加速することで、人事業界が活気付いたら良いなとも思っています。

りょかち:色々な種類のアワードが生まれても面白いですよね。盛り上がりそう!(笑)。

海外人材の採用アトラクト、キャリア形成支援を目的に導入した事例

りょかち:すでに、何社かsakazukiを活用してくださっている企業様もいらっしゃるんですよね。

石部:現在は、NTTさんやLIFULL Tech Vietnamさん、「喜多方ラーメン」で有名な麺食さんなどに導入いただいています。具体的な活用方法として、LIFULL Tech Vietnamさんは、エンジニアのキャリア形成支援と採用ブランディングの一環として利用してくださっていますね。

▼LIFULL Tech Vietnam様に発行した際のプレスリリースはこちら
NFTを利用した「キャリア証明書」をLIFULL Tech Vietnam社MVP受賞者8名に発行。個人のキャリア形成や人的資本開示による企業認知向上を支援。 – PR TIMES

今、ベトナムのエンジニア市場はレッドオーシャンで、どの企業も給与や福利厚生などの面で差別化を図りながら人材を取り合っている状況だと言われています。そうなると当然、資本を持っている企業さんが勝つ世界じゃないですか。

ではどうやって他の企業と差別化するかという時に、その企業に所属する居心地の良さが重要で。ベトナム人の国民性って面白くて、家族感を大切にする側面が強いので、社員全員で旅行に行ったりするらしいんですよ。また、自身の給与やキャリアについても家族間で積極的に話す人も多いらしくて。

そういった側面を踏まえて、「キャリア証明書」を発行することが社員のエンゲージに繋げられるのではないかという仮説の元、同社の代表の方とお話しして実行させていただきました。

また、麺食さんも海外人材の採用を強化したいという背景で導入してくださっています。

▼麺食様に発行した際のプレスリリースはこちら
NFTで国境を超えた雇用を創出。麺食が「キャリア証明書」の発行を通じて、個人の成長を促進し、企業認知の向上を目指す。 – PR TIMES

ここ数年、日本のインバウンド需要の回復と共に飲食店の活気も戻ってきている中で、日本の食の良さって味はもちろん、滞在時の体験もあると思っていて。その際に、英語で接客できる海外人材を採用して接客の質を担保する方法も考えられますよね。

けれども、グローバル規模で人材の流動性が高まっている中で、海外の求職者の方からも選ばれるための設計はやはり必要で。そこで、働いた証をちゃんと「キャリア証明書」として還元することで、彼らが帰国した後も証明書を使ってキャリアアップできるようにサポートする姿勢が重要だと考えています。

sakazukiを導入してくださっている企業に共通してるのは、やはり従業員の方々を大事にされている姿勢で、従業員が主体的にキャリア形成をできるようサポートしたいという想いがあるんですよね。

また、先ほどからお伝えしている通り、キャリアを積んだ後に離職してしまう人に関しては「仕方ない」と感じていて、その分新しい人材が入ることによって企業が成長すると考えている点も共通していると感じています。

りょかち:では、直近のsakazukiは外国人を採用したいという企業様向けのサービスになるのでしょうか?

石部:直近の導入事例を挙げるとそうですが、今後は日本国内のスタートアップ企業も巻き込んでいきたいと思っています。

スタートアップ業界はそもそも人材の流動性が高いですし、優秀な人材を取り合っている状況なわけじゃないですか。ただ、日本国内の人材って「共有資産」でもあると思うので、スタートアップ間で副業し合ったりキャリアアップとして転職するようなエコシステムを作りたいと思っています。

リクルートのような「人材輩出企業」を生み出すエコシステムを作りたい

りょかち:では最後に、今後の展望をお伺いしても良いですか。

石部:僕は、4年間でエンジニアとして外で働けるようなレベルに育ててくれて、辞める際も「卒業おめでとう」という雰囲気で送り出してくれた前職のリクルートにはすごく感謝していて。なので、リクルートのような人材輩出企業がたくさん生まれるエコシステムをsakazukiを通じて作りたいと思っています。

今後、日本人の人口が減少していく中で、若い優秀な人材も減っていくわけじゃないですか。その中で、お金がある企業間で人材を奪い合う状況って本当にナンセンスだと思っていて。

そこで、sakazukiを通じて人材の環流エコシステムを構築して、必要な企業に必要な人材が採用される環境を作れれば日本国内のイノベーションも活性化すると思いますし、経済の活性化にも繋がるのではないかと感じているので、今後10年ほどを楽しみに事業を創っていきたいですね。

りょかち:なるほど。改めて、本日は色々なお話をお伺いできて面白かったです!ありがとうございました。

▼本記事の後編はこちらからご覧ください
「キャリア証明書」をもらってみて、どうだった?PitPaでMVPを受賞した、りょかちさんより │ PitPa Talk

▼sakazukiの詳しいサービス概要はこちらから
https://speakerdeck.com/pitpa_pr/2023nian-du-ban-kiyariazheng-ming-shu-wohuo-yong-sitacai-yong-guang-bao-zhi-yuan-sabisu-sakazuki?slide=33

▼PitPaの採用情報はこちらから
https://en-gage.net/pitpa_career/?via_work_page=3543139

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