PitPaの現在地〜音声メディア市場への参入から、Web3.0事業立ち上げまで〜 │ PitPa Talk

この記事では、株式会社PitPaの社内の様子をお伝えするオウンドポッドキャスト番組「PitPa Talk」の内容を、一部編集して掲載しています。記念すべき第一回目は、PitPa代表の石部(@isbtty7)と、PR担当のりょかち(@ryokachii)がPitPa創業から現在までのアレコレをお話しています。

PitPa創業から現在までの軌跡

りょかち:では早速、石部さんの自己紹介をお願いします。

石部:PitPa代表の石部 達也です。新卒からずっとエンジニアとしてキャリアを積んできて、2018年にPitPaを創業し現在5期目に入りました。事業内容としては、ポッドキャストを軸としたメディア制作事業と、Web3.0領域での新規事業を行っています。

りょかち:創業時はポッドキャスト事業からスタートさせて、最近Web3.0事業にも展開されていますよね。意外な組み合わせだと思うのですが、どのようなきっかけでそれぞれの事業をスタートさせているのでしょうか?

石部:実は、創業時はアメリカ発の音声SNS「Clubhouse」のようなアプリを作ろうとしていたんです。ただ、2年ぐらいやったタイミングでピボットしていて。その後、ポッドキャストのコンテンツ制作に舵を切りました。

音声コンテンツを制作しながら、収録の様子を納めた映像がコンテンツになると思ってビデオポッドキャスト化したり、音声をテキストメディア化したりするなど、マルチメディア的に展開してきました。

すると、コンテンツ毎に「ファン」がちゃんとつくようになって。そこで、メディアとファンをつなぐ何かをできないかと考えているときに登場したのがWeb3.0の技術でした。振り返ると、ボトムアップで軌道修正しながら創業時に予想していたものとは全く異なる事業が生まれているような会社ですね(笑)。

りょかち:なるほど。最初に「Clubhouse」のようなアプリ制作に着手されたのは、何がきっかけだったのでしょうか?

石部:2018年頃はInstagramやTikTokが話題になっていたので、最初はSNSを作りたいという気持ちでスタートしたんです。僕の前職は副業が可能な環境だったので、TikTok運営会社のBytedance社で副業をしていたのですが、毎月ユーザー数の跳ね上がりが本当にすごくて。

自分でもこういうサービスを作ってみたいなと思って。その当時、中国では音声ビジネスがとても伸びていたので、音声に特化したSNSを作りたいと思ったのがPitPa創業の経緯です。

立ち上げ当初は順調にユーザー数も伸びていて、コアな初期ユーザーが100人、200人と増えてきたタイミングで、ユーザーの方々が自主的にCMを制作してくれたり、オフラインのイベントが開催されたりして良い立ち上がりだったんです。ただ、そこからユーザー数が伸び悩んでしまって。どうしても1000人、1万人までいかなくて、いつの間にか2年ほど経っていたんですよね。

ただ、音声コンテンツのエンゲージメントはすごかったんですよ。というのも、当時のアプリ市場では1人あたりの利用時間が10〜20分ぐらいあれば良い平均だったのですが、PitPaの音声アプリでは30〜40分が平均だったので可能性を感じて。

さらに、アメリカですでにポッドキャストが流行っていることを知って日本国内で流行るのも時間の問題だと思い、SNSから音声メディア事業に振り切ったのが2期目のタイミングです。

PitPaが展開する音声メディア事業の「2つのビジネスモデル」

りょかち:現在の事業について詳しくお伺いしても良いですか?

石部:現在、大きく分けて2つのビジネスモデルがあります。

1つは自分達が運営しているメディアですね。「バーティカルメディア」と呼ばれるもので、カテゴリを絞ってコンテンツ制作を行うメディアのことで、PitPaはテック系に特化したポッドキャストを展開しています。

例えば、デジタルガレージ社の共同創業者である伊藤穰一さんのポッドキャスト「Joi Ito’s Podcast」、最近スタートさせた「エンジニアリングマネージャーの問題集」のように、エンジニアやいわゆるIT人材に向けたポッドキャストを制作しています。マネタイズ方法は、基本的には企業の広告ですね。

国内のIT人材の多くが、PitPaのポッドキャストを聞いているという状態を作れたら最高ですし、それが僕たちのバーティカルメディアの目指すべき方向性です。

もう1つは、「オウンドポッドキャスト」の制作事業です。今はこちらの方が需要が高い傾向にあります。

世の中的に、企業の採用文脈でオウンドメディアの重要性が増しているのですが、どこも共通した課題としてエンジニア採用が難しいという声が多くて。エンジニア人材が不足しているのもあって、彼らが企業を選べる立場にいる、というのが1つの要因ですね。

そうすると、企業は選んでもらうためにカルチャーや社長やCTOの人柄など、候補者にとって選ぶ材料となる情報として露出していく必要があります。その手段としてポッドキャストが有効だという空気感が生まれつつあって。そうした企業さんに対し、音声コンテンツ制作のプロデュースなどを行っています。

▼取り組みの一例
約5万人のエンジニアにリーチ!PitPaが「エンジニア採用ポッドキャスト広告プラン」をリニューアルし、2023年1月~6月の広告枠の販売を開始

りょかち:たしかに、いま音声メディアがすごい盛り上がってますもんね。

石部:昔に比べて、増えてきたと思いますね。音声メディアは去年からちょっとずつブームの火がつき出した感覚です。

りょかち:去年ごろから手応えは感じられてました?

石部:手応えを感じ始めたのは本当に最近です。去年ぐらいに、SpotifyやAmazonがポッドキャスト市場に参入してきて、それをきっかけに音声コンテンツにお金が集まり出したのかなと。

さらに、市場では良いコンテンツがどんどん公開されていて、ボトムアップ式にポッドキャストを聞くリスナーが一気に増えたと思います。そうしてやっと、企業側はどうマネタイズしていくかを議論できるようになったと思っていて。

今ポッドキャストを聞いている方々は、例えばIT系の方やエンジニアの方など、広告という観点でいうと「広告価値が高い人」が多い傾向にあります。だから僕たちも、広告を展開してマネタイズすることができた。

一方、動画市場はだいぶ加熱しきった市場だと思っています。NetflixやAmazonPrime、AbemaTVなどの企業がこぞってお金を投下してコンテンツを生み出し、ユーザーの可処分時間の1分1秒を巡って争う状況になっている。ただ、その競争に疲弊した企業も出てきているのが現状です。そうした中、音声コンテンツは「スキマ時間」で価値提供できるという特徴もあります。

つまり音声コンテンツの魅力として、広告価値の高いリスナーが多いという点と、動画市場がレッドオーシャンになりつつある中で、音声はまだまだブルーオーシャンでビジネスの可能性がある。ただ、元々音声番組に参入していた企業からすると、ようやく投資回収できた企業が増えてきたのが現状だと思います。

りょかち:では、今後もっとビジネス的にも面白くなると。

石部:もっと伸びていくと思います。

りょかち:音声メディア市場が盛り上がっている中で、PitPaの強みはどのような点にあるのでしょうか?

石部:ポッドキャストの伸ばし方に関する施策はここ2年ほどのノウハウや知見が貯まっているので、競合と比較しても優位性があると思っています。また、ラジオ局出身などバックグラウンドに専門性のあるクリエイターも多く抱えているので、単純にコンテンツの質を担保できる点も強みです。

加えて、今後はコンテンツに関してもWeb3.0の技術と掛け合わせるなどして、クリエイターを制作面、テクノロジー面の両輪でサポートできる体制がある点が強みになっていくと思いますね。

なぜ、ポッドキャストを制作するPitPaがWeb3.0領域へ?

りょかち:現時点でWeb3.0市場のビジネスは多種多様だと感じているのですが…その中でPitPaはどのような事業を手掛けられてるのでしょうか?

石部:今はまだ仮説検証のタイミングではあるのですが、主に2つのプロジェクトを行っています。

1つは、「エンゲージメント事業」です。メディアとオーディエンスの関係性の可視化を目的にNFTを活用した仕組みを構築しています。

その第一弾として、元MITメディアラボ所長で、現在は千葉工業大学変革センター所長を務める伊藤穰一さんと運営しているメディア「JOI ITO Podcast 変革への道」のメンバーシップNFTを発行しました。

▼プレスリリースはこちらからご覧ください
株式会社PitPa、番組リスナー向けNFT会員証のアップデートを実施〜ゲーミフィケーションを取り入れ、聴取者のロイヤリティ向上を目指す〜 – PR TIMES

番組を聴けば聴くほどに仮想通貨ベースのトークンが貯まる、いわゆる「Listen to Earn」の仕組みを取り入れています。

具体的には、ポッドキャスト内で理解度チェックのような質問を出して、正解したユーザーに仮想通貨を付与します。その仮想通貨はオフラインイベントの参加チケットの購入に使えたり、他にもいろんなユーティリティを検討している段階ですね。つまり、メディアを中心に経済圏を作る事業が「エンゲージメント事業」です。

もう1つは、ポッドキャストとは少し離れるのですが、千葉工業大学さんと行っているプロジェクトで同大学の学修歴証明書をNFTで発行しています。

▼プレスリリースはこちらからご覧ください
国内初!千葉工業大学で学修歴証明書をNFTで発行 – PR TIMES

直近では、NewsPicksさんが開講している実践型のスクール「NewsPicks NewSchool」の「web3×ビジネス」回において、NFT受講証明書の発行を支援しました。

▼プレスリリースはこちらからご覧ください
リスキリング時代の学びを加速!NewsPicks NewSchoolの受講証明書をNFTで発行 – PR TIMES

これらの事例のように、ブロックチェーン技術を活用して学位や職歴を人に紐付け、人材の流動性を促すような人材事業を将来的には展開したいと思っています。

例えば転職時に、前職で何をしていたかを職務経歴書などに自分で書く必要がありますよね。ただ、正直「嘘」って書き放題だと思うんです(笑)。反対に、口下手だと能力があっても良い仕事に就けない可能性もあるわけで。

そこで、ブロックチェーン技術を使うことで解決しようとしています。個人の実績や行動の軌跡を、次の会社に引き継ぐ際にNFTとして残そうという試みにチャレンジしているんです。そうすれば、自分自身が経歴を書くよりも信憑性や利便性が高いですよね。例えば、AさんはJoi Ito’s Podcastのプロデューサーとして活躍して、メディアの実績がこれだけ伸びましたという話も、個人が主張するよりも会社が紹介してくれていた方が転職には有利ですよね。NFTであれば、情報のFrom(誰から)とTo(誰に)が明確なので、わざわざ情報の真偽を確かめる必要もなくなります。

りょかち:ポッドキャストとはまた全く異なる事業ですね。

石部:そうですね。ただ、広く捉えるとすべて繋がっているんです。

例えば、バーティカルメディアに広告を出稿してくださるクライアントのニーズは、エンジニアを採用したいというニーズです。加えて、職歴NFTをやる目的もその人の能力を可視化して採用に繋げることなので、それぞれの事業を広義では繋がってると思いますね。ミクロで捉えると「何やってるかわからない」と言われちゃうかもしれないですけど(笑)

りょかち:そうなると、事業で見るとバラバラでも、クライアントとなる層は一緒になる場合が多いのでしょうか?

石部:そうですね、それぞれ目的が異なるだけかなと。広報としてポッドキャストコンテンツを制作したいのか、あるいは広告枠に出稿したいのか。またはエンゲージメントの向上を目的としてNFTを配布したいのか、SBT(※)のように譲渡できない仕組みを使って行動を経歴として残していきたいのか。採用に関する手段を幅広くカバーしている状況です。

※「SBT(SoulBound Token)」とは、譲渡不可能なNFTのことでEthereumの共同創設者の一人であるVitalik Buterin氏によって提唱された

今後、PitPaが提供するポッドキャストのビジネスモデルはほぼ変わることはないと思います。ただ、Web3.0の事業に関してはまだまた仮説検証の段階ですし、全く違う方向性に行く可能性もあると思いますね。

りょかち:実際、Web3.0事業の手応えってどうですか?

石部:想像以上にありますね。特に千葉工業大学の学歴NFTを発行してからは多種多様な企業の方から連絡をもらっていて、 社会的ニーズはめちゃくちゃあるなと。

りょかち:具体的に、どういう方々がどのような課題をもって依頼してくるのでしょうか?

石部:例えば、海外の方を採用したいときに、日本企業の方からすると彼らがどんなことをやってきたのかわからない場合が多いと思うんです。そこで例えば、現在は日本のAという会社でこういう仕事をしていて、過去には海外のBという企業でこんな実績がありますといった情報がわかるだけで全然違いますよね。

そういったブラックボックスになってる人材マーケットに対して、いわゆる「リファレンスチェック」的にブロックチェーン技術を使うのはとても需要があると思います。すでに水面下でプロジェクトはスタートさせていて、来年には発表できるかなと思います。

PitPaで働く人たちって、どんな人?

りょかち:PitPaの事業を聞いてると、いろんな方が働いていらっしゃるように感じるのですが、どのようなメンバーで構成されているんですか?

石部:取締役が僕を含めて3名で、ポッドキャスト制作チームはラジオ局での勤務経験をもつメンバーやディレクターとして活躍しているメンバーが8~10名、Web3.0に関しては基本エンジニアのみで構成されています。

りょかち:Web3.0の事業では今どのような方を求めていますか?

石部:ある程度Webエンジニアリングで経験を積んだ上で、新しい技術を学びたいという気持ちを持ちつつ、スタートアップで新規事業の立ち上げをやってみたいという方には是非入っていただきたいですね。

基本、PitPaのエンジニアは全員フルスタックで働いているので、技術的バックグラウンドに合わせて特定の領域のみ担当するということはありません。課題やタスクをそれぞれ分担して、やれること、やりたいことを主体的に刈り取っていくような働き方です。

りょかち:本当に自由な雰囲気がありますね。今入社したらどのような仕事を担う形になるのでしょうか?

石部:Web3.0の世界は、技術が先月と今月では全然違うものが出てきたりするくらいスピード感のある領域です。多くの方からお問合せをいただいている中で、「アーキテクチャ的にはこれがいいよね」といったことを、一緒に決めて、それを元に設計し実装するという点がマストのタスクになると思います。

りょかち:なるほど。クライアント窓口から実装までやるとなると業務範囲が広いですね。

石部:そうですね。その分とても面白いと思います。

Web3.0を掛け合わせた、新たなメディアのかたち

りょかち:現状のお問合せは、職歴トークンに関するものが多いのでしょうか?

石部:もちろん他のお問合せもありますが、比較的多いですね。

りょかち: いろんなお問い合わせがある中で、PitPaとしてはWeb3.0でどういう事業を展開していくかなど、方向性は決められているのでしょうか?

石部:僕としては職歴トークンの事業は引き続き展開していきたいなと思っています。お金で買えないNFTって面白いじゃないですか。また、既存のポッドキャストビジネスと相性の良いものはやりたいなと思っています。その両輪が掛け合わさるとPitPaの強みになると思います。

今後やる可能性が低いのは、IP(知的財産)をNFT化して売るビジネスです。PitPaはIPに強い訳ではないですし、ゲームなどのコンテンツを自社で持っている訳でもないので、強みを活かせる領域で展開していきたいですね。

りょかち:音声事業というよりも、人材事業を軸に展開していく構想なのですね。少し話は戻りますが、エンゲージメントに関してはどのメディアも課題だと思うので、そこをWeb3.0で解決しようというのもすごく面白そうです。

石部:その点に関しては、やる価値があると思っています。国内のみならず海外でもそうですが、メディア事業ってビジネス的に厳しい状況がずっと続いていると思っていて。今後、閉じていくメディアもどんどん増えてくると思っています。

実際、PitPaと関わりのある地方のラジオ局でも「メディアのあるべき姿」がよく議論されていて、Web3.0はそこにヒントを与える存在になりうるのではないかと思っています。なので、リリースしてしっかり価値を発揮できれば、メディア業界全体にインパクトを与えられる可能性があるのではないかと。

今、「DAO(Decentralized Autonomous Organization:分散型自律組織)」(※)でメディアを運営する仕組みも構想中です。これはエンゲージメント文脈で考えているプロジェクトですね。

※特定の所有者(株主)や管理者(経営者)が存在せずとも、メンバーが自主的に活動することで事業やプロジェクトを推進できる組織のこと

メディアとオーディエンスを繋ぐNFTの話を先ほどお伝えしましたが、リスナーの方々も株主として加わってもらって一緒にメディアを育てていく仕組みを作れたら面白いなと。

例えば、先ほどの地方のラジオ局でも、単にスポットCMの枠を販売するだけでなく、番組のスポンサーになってくれる方々にトークンを発行し、ステークホルダー全員で「メディアのあるべき姿」を共創していく世界観です。

りょかち:新しいメディアのかたちを模索したい方にとってもおもしろい環境ですよね。

石部:そうですね。メディア論などに興味がある方にとっても面白い環境だと思います。

りょかち:最後に、今後の展望をお伺いさせてください。

石部:まずは、4年続けてきたポッドキャスト事業を今後も着実に伸ばしていきたいですね。そして中長期では、Web3.0領域での事業をしっかり固めていきたいです。

りょかち:石部さん、本日はありがとうございました!

おわりに

今回は、記念すべき第一回としてPitPa創業から現在までの事業についてお伝えしてきましたが、いかがでしたでしょうか。今後も、PitPaのメンバーが回毎に入れ替わりながら登場していきます!お楽しみに。

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