本音を伝えるために、ポッドキャスト配信を始めた。株式会社アトラエが信頼するポッドキャストの本音を伝える力

企業のオウンドポッドキャスト制作を手掛けるPitPaは、ポッドキャスト番組『オウンドポッドキャストインタビューbyPitPa』を運営しています。

こちらの番組では、企業ポッドキャスト配信者をゲストに招き、様々なポッドキャストの制作裏話を聞くことで、新しくポッドキャストで発信をしたいと思う皆様に有益な情報をお届けしています。また、PitPaブログでも、その内容を一部編集して公開してまいります。

第9回のゲストは、求人メディア『Green』を運営する株式会社アトラエ。『Green』は、IT・インターネット業界に強みを持つ転職アプリで、「転職をカジュアルに。」というテーマのもとユーザー体験が設計されています。応募する前に気になる企業に話を聞けるカジュアル面談や、企業の雰囲気が分かる豊富なビジュアル情報がサービスの特徴です。

2021年には、ポッドキャスト番組『Greenに書けない転職ウラ話ラジオ』を開始。丸2年間毎週配信を続けており、配信数は100話を超えています。アトラエの社員2人と、『Green』のライター1人からなる3人の業界人が、赤裸々に語る転職の「ウラ話」は、他では聞けない濃い内容ばかり。

今回は、新卒採用でアトラエに入社をして以来、10年間『Green』事業に携わっており、ポッドキャスト番組の発起人でもある井端さんに、立ち上げの経緯や運営のこだわりをお伺いしました。

転職業界の「本音」を誠実に伝えたい。個人の思いを原動力に立ち上げた『グリテンラジオ』

───最初に、井端さんが『Green』の事業担当として、どのような役割を担われているのか教えてください。

マーケティング全般ですね。『Green』をもっと世の中の方に知っていただくため、また、サービスとして体験価値をより向上させるための業務全般に、広く携わっています。

───ポッドキャストも、そうしたマーケティング活動の一環として始めることになったのでしょうか。

いえ、ポッドキャストに関しては、ビジネス課題というよりも、個人的な課題意識から始まっています。もちろん、仕事の中でやらせていただいてはいるのですが、本当に個人の思いベースで、数値的な成果もあまり問わずに運営しています。

───ポッドキャストを始められて丸2年、配信数も100話を超えて、ずっと更新され続けているのはすごいことだと思います。どのような「個人の思い」が、ポッドキャストを運営する原動力になっているのでしょうか。

『Green』の運営をしていると、転職のサービスに関わる仕事は、基本的にはやはり「マッチング」の仕事だと実感します。求職者の方と企業の方が出会う場を演出することが我々の仕事です。だからこそ、我々自身の価値観については、サービスの中でお伝えしきれないんですよね。だから、ポッドキャストで『Greenに書けない転職ウラ話ラジオ』、略して『グリテンラジオ』を始めました。番組名の通り、『Green』に書けないことはすごくたくさんあって。だから『Green』とは別で、僕らが伝えたいことを伝える場所をつくりたい、と考えました。

伝えたいことは、僕らがサービス運営にかけている思いや大事にしていること、そして『Green』を使っていただいている企業さんの魅力です。企業さんの魅力を伝えるのは実はすごく難しくて、文章でぱっと書いてお伝えできるようなものではなかったりもするんです。「良い企業さんなのに全然伝わっていないな」といったモヤモヤ感も日頃感じていました。

さらにもう一つは、「本音」を発信したいということです。転職・求人業界には、なんとなく本音と建前のダブルスタンダードが存在しています。「誰もが建前の話ばかりしていて、しかも誰もがそれに気付いている」という不思議な空気感を、長く業界にいて肌で感じてきました。だから、あえて「本音」を伝える場をつくりたいと思いました。

『Green』のサービス運営においては、誠実であることや嘘をつかないことがカルチャーとして根付いています。僕個人としても、そうした価値観を強く持っており、だからこそみんなが知りたい本音や実態がきちんと語られる場をつくりたいと考えました。

───そうした思いが、ポッドキャストという形で結実したのは、何かきっかけがあったのでしょうか。

僕の個人的な課題意識を、社内でいろいろな人に話していたところ、弊社が依頼をしているライターさんの中に、同じことを言っている人がいることが分かったんです。竹田さんというそのライターの方と繋いでいただいたところ、意気投合し、一緒にポッドキャストを始めるに至りました。竹田さんには、ポッドキャスト内でパーソナリティをやっていただいていますが、話すお仕事をされていたのかなと思うくらい話が上手で(笑)、僕もとてもリスペクトしています。

───番組としては、求職者の方に聞いてもらいたいイメージでしょうか。

求職者の方ももちろんですが、企業の方に聞いていただきたいという思いもあり、両者に聞いてほしいと思いながら運営しています。やはり転職活動はマッチングなので、互いが何を考えているのか知ることがすごく大事だと思っているからです。

例えば、番組の中で企業の採用課題の話をすることもあるのですが、求職者の方が我々の話を通して間接的に企業の思いを知ってくださると、「そういう背景があってこういうことをしていたのか」と気づくことがあると思います。やはり、マッチングする立場としての意識は強いですね。

───両者にとって、とても有益なお話が聞けそうですね。『グリテンラジオ』は、収益を出すモデルにはされていないと聞きました。

はい、番組内で紹介する企業さんからも、一切金銭はいただいておりません。企業さんから、出させてほしいと依頼いただいたり、広告メニューとして買いたいと相談いただいたりすることもあるのですが、あえてビジネスにはしていません。ただ代わりに、我々が本当に話したいことを話す場として、割り切って運営しています。やはりきちんと「本音」で話すことを大事にしたいと思っています。

音声なら、手軽に始められて気軽に聞いてもらえる。自主性を重んじる社内環境を追い風に自由に配信

───そうした「本音を伝える」際に、文章では難しいというお話がありましたが、YouTubeをはじめとした動画配信など、ポッドキャスト以外にも発信方法はあったと思います。なぜ音声コンテンツという方法を選んだのでしょうか。

理由はいくつかありますが、まずは手軽さです。音声は編集が楽なんですよね。やはり僕を含め、ポッドキャストだけを仕事としているメンバーはいないので、一回の神回をつくるために何時間もかけて編集する、といったことは実際難しい。持続的に運営して長く興味を持っていただくことを重視したかったので、取り組みとしてのサステナビリティはすごく意識していました。実際に続けられるイメージが持てて、スモールスタートで始められる点が、音声メディアを選んだ大きな理由です。

あとは、僕自身が昔からラジオやポッドキャストをずっと聴いてきた人間なので、映像がなく音声だけの方が身近に感じることもあるなと個人的に思っていました。映像があると、やはりコンテンツに集中しなければいけないので、目の時間を使ってしまう。ながら聴きが難しくなると思います。僕らは「ながら」で聴いてほしいと思っているんですよね。例えば居酒屋で、仕事の話をすることもありますよね。あのくらいのノリで聞いてほしいと思ってやっているんです。気軽に話して気軽に聴いてもらいたい、音声コンテンツはその温度感がちょうど良いと感じました。

───初めから、『Green』という事業名を出して、株式会社アトラエとしてポッドキャストを始める、ということは決まっていたのでしょうか。

そうですね。あくまで『Green』に関する取り組みの一つとして、実施することは決まっていました。

───ポッドキャストを検討されている他の企業さんからもよく聞かれるのですが、始めるにあたって必要な、社内承認のハードルはどのように乗り越えたのでしょうか。

まず一番最初は、事業部内の全体ミーティングの場で、自分がやりたいと思っていることを話しました。でも、みんなポカーンなんですよ(笑)。全員「井端は何を言っているんだ」という感じのリアクションでした。ただ実際にやるとなると、コストがかかるところもあるので、上長にあたるメンバーには改めて意義を説明しました。そのうえで、「ポッドキャストという形でやりたい」「ただし実利的なリターンはすぐには出ない想定でやりたい」という具体的な意思まで伝えたと思います。そして最終的には、「もし事業部ではできないということであれば、自腹を切ってでもやります」という感じで、強引に話を通したところもありました(笑)。

ただコストといってもマイクなどの機材代くらいで、何十万円もかかるわけではないので、上長にも話はしやすかったです。あとは、アトラエの社内文化として、自主性を重んじる風潮がベースにあり、ルールでガチガチなカルチャーではないので、始めやすい環境だったというのもあると思います。

───社内の広報チェックなどはどのように対応されていますか?編集についても、メンバーのみなさんで自由にアレンジされているのでしょうか。

広報チェックも一瞬話は出たのですが、あまり厳密にはやっていないですね。もともと広報リテラシーが高いメンバーだからというのもあります。インサイダー情報など、本当にまずい部分があればカットする、といった形で対応しています。

具体的には、まず録音したデータを僕の方で一次編集した後、一緒にやっている紺谷というメンバーにノイズ除去などもう少し細かい編集をしてもらっています。編集の2人が一通り聴いて、問題ないものが世に出る、という最低限のチェック体制です。

キャラクターの異なる3人でバランスの良いトークを展開。配信が自社の採用に繋がったケースも

───番組の中身についても詳しく伺えればと思います。最初は、井端さんと竹田さんの2人で始め、途中から紺谷さんが入って3人になりました。2人よりも3人の方がやりやすさがあったのでしょうか。

はい、3人の方が良いという結論になりました。2人の時、収録や編集をしながら「余白がないな」と思ったことがあって。収録の場に2人だけとなると、ちょっとした緊張感が生まれるんですよね。会話のキャッチボールを自分が止めてはいけないという緊張感があって、カジュアルにやるというコンセプトのはずなのに、若干張り詰めた空気を感じてしまっていました。

あとは、性格的に僕も竹田さんも真面目なんですよね。だから、興味深い話ではあるかもしれないけれど、聴いていて疲れる話になっているなと気づきました。そこで、会話のスパイスとして、ちょっと変わったことや変なことを言う人が一人いた方が、トータルとして聴きやすいかもしれないと思い、紺谷さんにお願いしました。僕と竹田さんは議論好きなところもあるので、ちょっとした意見対立があったときの中和剤としても、実は3人目が必要なんだなと感じました。

───3人の男性が話していると、誰が話しているか分かりづらくなる場合もありますが、『グリテンラジオ』に関しては3人のキャラクターが立っていてとても聴きやすいです。

ありがとうございます。紺谷さんに出てほしいと頼んだ時、3人いると誰が話しているか分からなくなるのではないか、という懸念はあがりました。ただ実際に一回撮ってみようということになり、撮って聴いてみたら意外と大丈夫だったので、そのまま続けています。

声質は似ていたとしても、話す内容として、僕はどちらかというと論理的に考えた意見が多いのに対して、紺谷さんは斜め上の新しい視点で入ってくることが多いなど、キャラクターが分かりやすくなっていると思います。そうしたバランスは今後も大事にしていきたいと思っています。

───先ほど、求職者の方にも企業の方にも聞いてほしいというお話がありましたが、実際にどのような方が聴いているか調べたり、リスナーからの反応を受け取ったりといったことはありますか。

求職活動をされている方や、脳裏に転職がちらついていらっしゃる個人の方には、やはりよく聞いていただいている感覚があります。企業の方でも、特に採用担当の方には聴いていますと言っていただけることが増えました。意外なところとしては、競合会社の方がすごく聴いているということですね。リサーチの一環として聴いていただいているのだと思いますが、確かに逆の立場でも聴きますよね。

あとは、弊社アトラエの選考を受ける方が聴いてくださっているみたいです。面接に出た社内のメンバーから、「今日面接でラジオの話している方いましたよ」と言われることがたびたびあります。採用という観点で聴かれていると思うと途端に恥ずかしくなりますが、実際の声としていただく数は、採用の文脈が一番多いかもしれないですね。

───自社の採用・選考に役立っている面もあるのですね。特に会社の雰囲気などはすごく伝わりやすい気がします。

そうですね。正直全然狙っていなかった文脈ではありますが、実際にはかなりあるのだと思います。会話のスタイルなど、僕と紺谷さんに関しては本当に仕事の時のノリと変わらないんです。会話のカジュアルさやトーンも含めて。

採用文脈で考えても、会話の雰囲気まで見える会社はなかなかないと思います。オフィスの写真や社員の顔写真、デスクの写真などは、見られることもあると思いますが、会話の時のトーンや語気の強さは見えないですよね。でも、会社を選ぶうえでとても大事な部分だと思うんです。そうした内面が見られる感じは、音声ならではの価値かもしれません。本当は、社内の飲み会を見せるくらいの方が、リアルが伝わって良いのではないかとさえ思っています。

───当初の目的でもある、転職者を求めている企業さんの紹介に関しては、実際に番組内で紹介した企業さんの採用に繋がったケースもあるのでしょうか。

厳密にデータで見るのは難しいのですが、放送後に紹介した企業さんへの応募件数が伸びるパターンは実際にありました。一つの企業を理解するのは、本当に難しいんですよね。だから、何らか興味のとっかかりをつくってあげるだけでも、応募したいと思う人は増えるのだと思います。

ネタや台本は用意しすぎない。自分たちが楽しんで配信することが続けるためのコツ

───企業紹介以外にも、転職に関わる知識やトレンドの話題について話されていますが、番組のネタはどのようにつくっていますか?

本当に毎週手探りですね。最初はネタリストのようなストックがあったんですが、今はもうほとんどなくて。毎週、次の週に何を話すかミーティングをしてその後収録をするのですが、毎回ブレストをしているような感じです。企業関連のネタに関しては、竹田さんが取材に行った後に面白かった企業を共有してくれるので、ストックとして溜まっていっています。でも企業紹介以外は、本当に都度考えてやっていますね。

前はもっと、自分の中にストックを持っておくようにしていたんです。不安なので。でも、最近はあまりそうしない方が良いと思っています。その時々で本当に話したい内容が出てくるまで待った方が、いざ話したときに盛り上がることが多いなと感じていて。思いついたときにメモをしておくくらいはするときもありますが、どちらかというとその時に話したい温度感を優先してトピック選びをしています。

あと個人的には、仕事の延長でブレストをしたくてトピックを選ぶこともよくあります。半分仕事のミーティングで話すようなことを、あえて『グリテンラジオ』の場を借りて議論することもあるので、トピック選びは気持ち的にも苦ではないです。

───トピックが決まった後は、それぞれ下調べや準備をして、台本を作って次週の本番に臨むのでしょうか。

大まかなトピックのメモだけをする台本はあるのですが、最近はあまりきちんとつくらなくなりました。最低限、抑えるべきポイントは前週のミーティングで話して、各自話すために気になることがあれば下調べをしますが、そこまで準備するケースは少ないです。どちらかというと、前週のミーティングの時の、どのポイントについて話すかの議論の方が大事だと思っています。

全員共通で、日々転職業界で仕事をしているので、トピックさえ見えれば日頃思っていることはいろいろ出てくるんですよね。台本を用意すると、その通りに読んでしまったり、会話の自然な流れが途切れてしまったりするデメリットが大きいと最近気がつきました。だから、あえてトピックにとどめている感覚が強いですね。そうすると、話が脱線しても許容できて、結果脱線した方が面白いこともあるので。紺谷さんが良い感じに脱線してくれたときも、台本がない方が脱線を活かした話がしやすいです。

───少し細かいところになりますが、収録や編集の方法も教えていただけますでしょうか。企業さんが作っている番組の中でも、かなり音質が良く、編集も聴きやすい印象があります。

毎回オンラインでZoomを繋いで収録しています。ただ、イヤホンなどは使わず、それぞれきちんとマイクを用意しています。編集は先ほど言ったように僕と紺谷さんの2人体制です。とはいえ僕らは編集をあまりしていないので、本当に最低限のいらない間の削除くらいです。あとはオープニングの音付けですね。

それでも大変だった点のひとつは、発話量のバランス調整です。竹田さんはやはりすごい量を話すので、他の2人との調整に苦労しました。今はあまり気にしなくなりましたが。竹田さんがかなり話して、僕と紺谷さんがうまく入れないみたいな悩みが最初はあったんです。今思うと慣れの問題だったので、結果的に今は解決されましたね。カットインしても大丈夫そうなタイミングで入ったり、被せて話したり。感覚が掴めたので今は問題ないですが、当初は悩んでいたポイントです。

───KPIなどは追っていないというお話でしたが、メンバー内でウォッチしている数字は何かありますか?

Voicyでは細かく数値が見られるので、チャンネル登録者数の推移や視聴完了率はたまに確認していますが、ほとんど見ていないです。

僕らは、楽しいなと思って続けている点が大きいと思います。やるべきだという使命感はあまりなくて、正直続けなければいけない理由は特にないかなと思っています。やりたくて始めたものでもあるので。今、事業成果にすごく繋がっていたら、やめられないと思いますが、そこまでではないと正直思っていますし。僕らがやりたい限り続ければ良い、くらいのライトさで考えていますね。気軽な方が続くのではないかと思っているところもあります。

ただ、「こういうトピックを増やした方がもっとこういう人は助かるかも」といった話はたまに出るので、話すトピックで番組の方向性を微調整している感じですね。でも、番組の目的はこれ、手段はこれ、目指す数値はこれ、まで決めてしまうと、どうしても仕事感が強くなってしまう。そうなると、話している側は楽しくないし、話している側が楽しくない番組は聴いていても面白くない。音声ではこちらの感情がダイレクトに伝わってしまうので、気負わないように工夫しています。

───最後に、井端さんの方から、紹介や告知がありましたらお願いいたします。

弊社アトラエは、採用を絶賛募集しております。僕と同じマーケティング職も含め、基本的には全職種募集しておりますので、もし今回の話の中で興味を持っていただいた点があれば、ぜひご連絡ください。

https://atrae.co.jp/en/recruit/

あとは、もしポッドキャストをやっていらっしゃる企業さんで、コラボのお話があればぜひやらせていただきたいと思っています。気軽にご連絡いただけると嬉しいです。コラボのお話は、番組のTwitterからご連絡いただけると一番早いかと思います。

僕らのポッドキャストのおすすめをあえて挙げるとすると、「#21 求人サービスのビジネスモデルとその裏話」かなと思います。周りからかなり賛否両論いただいた回です(笑)。

転職サービスにはサイト完結のものと、エージェントがしっかりサポートにつくものの、大きく分けて2種類があるのですが、それぞれどういった特徴があるのか、どのように企業さんからお金をいただいているのか、ゆえに運営側は何に意識を向けているのか、リアルな話をしました。もちろん誰かを攻撃するような内容ではないので、僕らは自信を持って話しましたが、かなり周りから言われはしましたね(笑)。でも本当に大事だと思ったからこそ話した話なので、ぜひ聴いてみてください。