企業のオウンドポッドキャスト制作を手掛けるPitPaは、ポッドキャスト番組『オウンドポッドキャストインタビューbyPitPa』を運営しています。
こちらの番組では、企業ポッドキャスト配信者をゲストに招き、様々なポッドキャストの制作裏話を聞くことで、新しくポッドキャストで発信をしたいと思う皆様に有益な情報をお届けしています。また、PitPaブログでも、その内容を一部編集して公開してまいります。
第11回のゲストは、メディアプラットフォーム『note』を運営するnote株式会社。「だれもが創作をはじめ、続けられるようにする。」をミッションに、表現と創作の仕組みづくりをしている会社です。『note』は、個人・法人・公的機関を問わず、あらゆるクリエイターの創作活動を支援し、安心して創作ができる雰囲気や多様性を重視しています。
2021年には、ポッドキャスト番組『note Tech Talk』を開始。『note Tech Talk』は、noteのエンジニアの方々が、仕事や会社、新しい開発アイデアについて語る番組です。会社全体の広報としてポッドキャストを始める企業様が多い中、『note Tech Talk』はテーマをエンジニアに絞っている点が特徴的。noteを支える開発技術や人に深く迫った、人間味溢れるコンテンツが魅力のひとつです。
今回は、2年前エンジニアとしてnoteに入社し、現在は技術広報としてポッドキャスト番組を担当するmegayaさんに、立ち上げの経緯から運営の苦労まで、リアルな実感をお伺いしました。
noteの技術面のブランディング・発信を担う「技術広報」。会社の”人間味”を伝えるために選んだポッドキャストという新たな手段
───まずは、megayaさんが担当されている「技術広報」の仕事について教えてください。
「技術広報」は、noteの技術面のブランディングや、採用に繋がる広報活動などを中心に担当する職種です。ここ数年、技術広報という職種をつくる会社はかなり増えており、大きな会社では専門の部署ができるほど、メジャーになり始めています。
今までは、会社が参加する技術系のイベントなどは、エンジニアが担当することが多かったんです。でも最近は、イベント専門の広報担当を置いた方が良いという考え方になり、エンジニアが技術広報を兼任したり、エンジニアから技術広報に移ったり、といったパターンが増えた印象があります。
例えば私は、Rubyで一番大きなイベントである「RubyKaigi」にnoteが協賛していることから、最近はイベントのグッズをデザイナーの方と一緒に考えたり、ブースの設置を手配したり、といった仕事をしています。イベント系以外にも、インタビュー記事の企画・執筆や、技術的な記事を社内メンバーへ執筆依頼するなど、広報活動全般に携わっています。
───ポッドキャスト番組『note Tech Talk』も、そうした技術広報活動の一環として始められたのでしょうか。
そうですね。発信の手段を何か増やせないか社内で話し合っていた中で、やはりどこもポッドキャストで発信しているという話になり、「うちも一度やってみようか」と割と気軽に始めました。
基本的に今までの広報活動は、記事を出すかイベントを行うかが中心だったんですが、どちらも人間味や会社の雰囲気までは伝わりにくいと感じていました。イベントは実際に顔を出してはいるものの、どうしても他社と一緒だったり、自分たちのLTの発表が中心になったりするので、会社の雰囲気は分かりづらいと思っていて。もっと会社の風土が伝わるような発信方法がないかと考えたときに、ポッドキャストが適切かなと思いました。
───megayaさんご自身も、もともとポッドキャストは聞いていましたか?
もともと私はラジオがすごく好きで、芸人さんのラジオなどを昔からよく聞いていたので、その流れでポッドキャストもたまに聞くようになりましたね。実は会社のポッドキャストを始めた後、個人でも趣味で同僚と配信をするようになりました。『てくてくFM』という番組で、自分たちが疑問に思ったことを話すというテーマで始めたのですが、最近は私の悩みを同僚に聞いてもらう流れになっています(笑)
広報活動は、目標の数値化が難しい。それでも、生の声から確かに感じた採用への貢献
───ポッドキャストを発信する最終的な目的としては、エンジニアの採用でしょうか?
そうですね。あくまで技術広報としての私のミッションは、「noteに良いエンジニアがいる」「noteはこういう技術を使っている」といったことを広める技術ブランディングではあるのですが、直結する最終的な目標は採用になりますね。
───そうした目的を設定すると、効果測定がなかなか難しいと思いますが、noteさんの技術広報としてはどういった指標を追っているのでしょうか。
難しいところですよね。他社の技術広報と話していてもKPIの話はよく出るんですが、「いろいろ考えた結果として、決めていない」会社が多いです。
仮にPVをKPIに設定して、数字を達成できたとしますよね。でも、PV数のうち、果たして何人が採用に興味を持ってくれたのかは分からないんですよね。例えば、「スプレッドシートの便利コマンド集」みたいなものを作って、バズったとします。でも、読んでいる人のほとんどが業界に関係がない方という可能性が大いにある。だんだんと、やはりPVなどの指標で測るのは難しいと分かってきました。
結果として、私は自分のアクション数ベースが一番良いと思い、「ポッドキャストを月に何本出します」「インタビュー記事を月に何本出します」といった数値を指標にしています。
───成果を数字で追いづらい分野ですよね。採用活動や面接の中で、「ポッドキャストを聞いています」「ポッドキャストをきっかけに興味を持ちました」といった実際の声を聞くことはありますか?
noteへの就職を本気で考えている方や、最終面接・二次面接まで進んでいく方は、いろいろな情報を見て来てくださることが多いので、「ポッドキャストを聞いて興味を持った」と言ってくださる方もいますね。面接に来てくださる方に、リンクで案内もしています。
ただ、人数としてすごく多いわけではないです。そもそも採用活動は、砂漠でダイヤモンドを見つけるようなものだと思っていて。どんなものが引っかかるか分からないので、いろいろな可能性を用意しておくべきだと考えています。ポットキャストも、何個も配信して少しでも聞いてもらって、結果、就職・転職を考えている方がnoteを評価する際のプラス1点になったら、十分なのかなと思っています。
自分がエンジニアだったからこそ、面白そうな開発話を集められる。普段は聞けない、番組だから聞ける質問を織り交ぜた企画アイデア
───ポッドキャスト運営の中で、megayaさんはどのような役割を担っていらっしゃるのでしょうか。番組の作り方を教えてください。
まず私が企画を作り、司会をお願いしている社内のエンジニアリングマネージャー(福井)烈さんに、大まかな質問の流れなどを確認してもらっています。続いてエンジニアをアサインし、収録。音声ができたら簡単に編集して、イベントや動画を担当している社内のチームに渡し、音声追加などの作業をお願いしています。最終的に入稿するまで、私が一気通貫で担当しているイメージですね。
収録はすべてオンラインで、Zoomで行っています。Zoom上でも念のため録音しておきつつ、各々macのQuickTime Playerで録音する形式です。配信の際は、基本的にQuickTime Playerの方を音源として使っています。編集ツールとしては、今は解約してしまったのですが、AdobeのPremiere Proを使っていました。
───司会の烈さんには、最初から指名でお願いをしたのでしょうか。
最初は私が司会もやってしまおうと思っていたのですが、よりnoteという会社の雰囲気を伝えるには、会社に長くいる人の方が良いと考えました。私は2年前くらいにnoteに入社したのですが、烈さんはnoteの最初期である6、7年前からいるので、そういう人がやった方がnoteの風土や雰囲気が伝わると思ったんです。加えて烈さん自身も、もともとポッドキャストに興味があったそうで、ちょうど良く司会をやってもらえることになりました。
───番組の企画やテーマは、どのようにアイデアを出していますか?
企画は、半分は社外に出して面白そうな話、もう半分は私が単純に聞いてみたい話、という2つの軸を設定して、興味があるものを選んでいます。前者に関しては、仕事をしている中で、面白い開発や良い取り組みを見つけたときにピックアップするようにしています。あとは、新しい社員が入ってきた時に、面白い経歴の人を見つけることもあるので、そうした自分で見つけたアイデアを司会に相談し決めていく形ですね。
私が元々エンジニア出身で、開発の中身も見ることができる分、面白そうな情報を他の人より拾いやすい面があると思います。私は、noteに入る前は社員が15人ぐらいの小さなベンチャー企業にいて、企業向けのチャットサービスを作っていたんですが、バックエンドを中心にしつつフロントエンドも担当していました。両方見られるので、ポッドキャストのネタを拾うアンテナも立てやすいのだと思います。
───アイデアを決める2つの軸のうち、後者は、megayaさんご自身が興味を持ったテーマを選んでいる、というのも面白いですね。
番組以外の場所だと、エンジニアの人に「これはどういう技術なんですか」「どうやって開発したんですか」といった質問をしたくても、なかなか面と向かっては聞きづらいんですよね。わざわざ一人のために話すことでもなかったり、資料見てくださいで終わってしまう話だったりもするので。そうした中で、開発の技術要素だけではなく、苦労したことや工夫したポイントまで直接聞ける場として、ポッドキャストはすごく良い機会だと思っています。
番組のインタビューという形をとると、聞くことに専念できるので楽なんですよね。普通の会話だと、会話のやり取りが発生して、質問も譲り合いになってしまう部分があるので、インタビューとして役割を分けた方が、気になっていたことをたっぷり聞けるなと感じています。
コツコツ配信し続けるための、モチベーション維持が課題。出演してくれるエンジニア探しにも苦心中
───今、しばらく新たな配信は止まっていると思いますが、どういった背景があるのでしょうか。
他社も同じだと思いますが、やはりポットキャストは効果が見えづらいんですよね。急激にPVが上がるといった、いわゆる「バズる」ことはほぼないコンテンツだと思います。そのために、制作側がモチベーションを保ちづらくなったというのが、配信を止めている一番大きい理由です。
ただ、社内からは、1か月に1回ぐらいの頻度でも続けた方が良いのではないか、と意見をもらっているので、少し方向性ややり方を変えて再開したいとは思っています。
───やはり聞いている方からの反応があると、モチベーションは上がりますか?
私の場合は、いろいろな人に聞かれるというよりは、社内の人から反響があると嬉しいですね。ポッドキャストを聞いたことで、他部署の仕事の内容が分かったなど、そうした反応を聞くとモチベーションは上がりますね。
ポッドキャストが好きな社内のエンジニアも何人かいて、またやらないんですかと聞かれることもあるんです。少しでもそうした声があるのであれば、月に1回でも続けた方が良いのかなと思っています。配信の作業自体は、そこまで負荷がかかることでもないので。
───他にも、ポッドキャストの番組制作・配信を続けていく中で、苦労したことはありますか?
人のアサインが難しいですね。自分が興味を持って、社会に出したいと思った情報を持っている方だったとしても、音声が苦手、自分の声を聞くのが嫌という方も結構いるので、だんだん出てくれる人が固定されてしまう部分もありました。出てくれる人を探す作業が一番難しいと感じましたね。苦手なことを押し付けるわけにもいかないので。
意外にも、番組は社内のコミュニケーションに役立った。ライター兼エンジニアのmegayaさんが見つめる、ポッドキャストの可能性
───そうした苦労を重ねながらも、ポッドキャストを始め、続けていた結果として、効果を実感したりやってて良かったと思ったりしたことはありますか。
今、noteはほとんどオンラインで仕事をするようになったので、内部の社員のことが把握できていないというケースもあります。その中でポッドキャストを始めて、社内のエンジニアを呼んで話を聞く機会ができたことによって、「この人こういうパーソナルな部分があるんだ」といったことが分かってきました。社員とコミュニケーションを取る場としてすごく良いなと感じています。
コロナ以降noteはリモートが基本になり、私自身もまさにコロナ禍に入社しました。面接もオンラインだったので、1年間ぐらいは社内の3、4人にしか会ったことがない状態だったんです。ポッドキャストを社内で何人が聞いてくれているかは分からないですが、番組を通して「この人、こういう人間ですよ」ということが社内にも伝わるようになったのかなとは思います。
───ポッドキャストは、リンクを貼ったり内容を記事として紹介したりと、メディアプラットフォームである『note』と相性が良いと感じています。『note』とポッドキャストは、何か連携できることがあるのでしょうか。
活用方法としては、単純にポッドキャスト番組を『note』で宣伝することもできますし、ポッドキャストの内容をそのまま記事化して、『note』で書くこともできると思います。社内でも、ポッドキャストともっと連携できたら良いよね、といったアイデアは挙がることが多いですし、個人的にも今後さらに何かできたら良いなと思っています。
───megayaさんご自身、ポットキャストやラジオがお好きというお話がありましたが、今おすすめの番組はありますか?
同業種のポッドキャストになりますが、LayerXさんがやっている『LayerX NOW!』という番組ですね。ずっと続けていることがまずすごいと思いますし、コンテンツも面白いです。CTO、CEOの方も出てきて、自分たちの事業の話を真摯に話しているんです。苦労話も含めて実情を話してくれたり、社外からもゲストを呼んだりしているので、聞くだけで、LayerXがどんな会社でどんな事業をやっているのか分かるようになっています。コンテンツとしてすごくまとまっていて、良いなと思っています。
───最後に、megayaさんの方から、紹介や告知がありましたらお願いいたします。
『note』は今、AIアシスタント機能を入れるなど、本当に創作しやすい環境を作っています。また直近では、「SNSプロモーション」という、SNSでシェアするとnoteの有料記事が割引・または無料で買えるようになる機能を出しました。よく、リツイートすると無料でプレゼント、のようなキャンペーンがありますよね。そういった企画の運営を手動でやるのは大変だと思いますが、noteの新機能を使うと簡単に誰でもできてしまいます。
有料記事を拡散した読者に、割引価格で販売できる新機能!SNSプロモーション機能を提供開始
https://note.jp/n/n1878ea0f7824
創作している人が、『note』だけで生きていけるインフラになることを目指しているので、今創作活動をしていて、自分の作品で生きていきたいと思っている方は、ぜひ『note』を使ってほしいと思っています。
あとは、私個人としては、『デイリーポータルZ』というメディアでたまに記事を書いているので、もし興味があればmegayaで検索して読んでいただければと思います。最近では、「ジェルネイルをして1ヶ月生活する」とか、「弟の就職祝いに10万円使って東京のホテルに泊まる」とか、そういった企画をやっているので(笑)、ぜひ読んでみてください。
「31歳男がネイルを1ヶ月つけて生活してわかったこと→ネイルは超楽しい!」
https://dailyportalz.jp/kiji/nail-super-happy
「10万使って弟のお祝いをホテルでしたら、ホスピタリティに溢れてて感動した」
https://dailyportalz.jp/kiji/kokyu-hotel-hospitality