PitPaで今、急速に勢いで人気を集めている番組があります。それが「100円で買い取った怪談話」。実際に心霊体験をした人たちから100円で買い取ったお話を、体験者が話している実際の音声でお伝えする番組です。パーソナリティは、怪談作家の宇津呂 鹿太郎さん。話の後半には、怪談作家である彼ならではの怪談の解説も聞くことができます。
ヒットのきっかけは、Twitterでとある投稿がバズったこと。しかし、そのバズを番組視聴につなげたのはディレクターのきめ細やかな努力でした。今回は、番組のヒットのために尽力したPitPaのサウンドディレクター・昆さんのお話をお伺いします。
最後に、お盆に向けた「怖〜い」お知らせもあるので、ぜひ最後まで読んでくださいね!
日本人が好きな「怪談」を誰もやっていない方法で番組にしようと決めた
――この番組を作ろうと思ったきっかけはなんだったんですか。
年末のドキュメンタリ番組で、宇津呂 鹿太郎さんが尼崎でやられている怪談売買所が紹介されていて、頭にずっと残っていたんですよね。それで自分で番組が作れるようになったときに、声をかけさせていただきました。
――怪談売買所のことを詳しく教えてもらえますか?
宇津呂 鹿太郎さんは怪談作家で、色んな人が体験した怪談話を本にしたりライブで話したりされている人です。その宇津呂さんがとある場所でやっている怪談を売り買いする場所で。100円で一般の人の怪談話を買い取ったり、逆に聞いた話を有料で話してあげたりしてるんですね。
――それってどういうニーズなんでしょう……
結構「自分の体験した怪談話を聞いてもらいたい!」ってニーズはすごくあるんですよ。心霊体験って、自分の中でモヤモヤしていて友達や家族に話しても、取り合ってもらえない。それを宇津呂さんのところに行けば、真剣に聞いてくれる。
今は番組づくりのためもあって、オンラインのフォームでも集めているんですけど、全国から沢山の怪談が集まりますよ。以前は尼崎周辺の人の話しか聞けなかったのが、沖縄とか、様々な地域の心霊体験が集まるようになって、地域性があるのが面白いですね。
――なるほど。よくわかります。私も母の実家でおじいちゃんがこちらを見ていることがあって。
ああ、よくある話ですね。それで、おじいちゃんの写真を見てみたら全く違う人だった、っていうオチもあります(笑)
――やめて!!!怖すぎる!!!(笑)私はちゃんとおじいちゃんでしたよ!!(笑)でも確かに、ついつい言いたくなる話、ありますね。
海外のPodcastで日本の歴史として紹介されていたんですけど、江戸時代で一番売れていた本は、怪談話だったそうです。日本の人は昔から伝統的にそういう話が好きなのかも知れないですよね。妖怪も好きだし。
昔とかって、変なことが起こったら妖怪のせいにしてたみたいですし。例えば鹿児島だと、朝お風呂が汚れていたら、かっぱのせいにする風習があるらしいですよ。
――そういうのありますよね。座敷わらしとか。暮らしと怪談はかなり身近。
日本人は怪談が大好き。なので、Podcastも調べてみたところ、心霊番組自体はあったんです。だけどほとんど全部がよくある怪談を朗読する番組だった。だから、「実録の怪談話があったら人気になるのでは?」と思ったんですよね。
一度のバズから大人気音声番組にまで上り詰めた、その裏側
――狙い通り、番組はとてもヒットしてると聞きました。どんなふうにリスナーが増えていったんでしょう?
最初は本当に誰も知らない番組でした。だけど、日々じわじわとリスナーが増えていくのは感じていましたね。一回宣伝をすると、その宣伝が終わってもランキングが落ちずに伸びていく状態が続いてて。それってつまり、知ってくれた人がそのまま定着してるってことだと思うんですよね。なので、知ってくれた人には、良い番組として受け入れられている感触はありました。
――その状態で、とあるツイートがバズったと。
そうですね。僕、毎日ランキングの順位をスクショしてるんですけど、バズる前の日はPodcast全体のランキングで50位だったんです。でも、Twitterでバズが起こって、結果的に7位まであがっていきましたね。
実は最初は「はあ?怪談売買所ー?」と訝しんでたんやけど、100円玉を挟んで対話するめちゃくちゃ奥の深いお店でした。さっき買った話を妻に披露したら面白がってくれました。怪談が旅する感じがすごいな。宇津呂さん天才やな。 pic.twitter.com/UkPHezJPy7
— 若狭健作 (@wakasakensaku) June 19, 2021
このツイートを見かけたときはすでに、9000RTまで数字が伸びてて、コメントを見てみたら「私も怪談を話してみたい」というツイートがたくさんぶら下がっていた。だから僕、何時間もかけて一人ずつに「こんな番組がありますよ」ってリプライしていったんです。
ただ、そのツイートがどんどん拡散して、途中で「これキリがない」と気づいたので、そのツイートに番組を紹介するツイートをリプライしておくことにしました。
こちらで集めた怪談を音声番組として配信しております!
体験者の語るリアルな怖い話の後に買い取っている宇津呂さんの怪談解説もあり、2度楽しめるので興味持っていただいた方は1度お聴きになっていただけると"怪談買取所"の雰囲気が分かると思います!https://t.co/37c22dMEsI— KON🎙ポッドキャスト専門ディレクター (@konteer10) June 20, 2021
そしたらそのツイートもすごく拡散やいいねしてもらえて。ヒットしたものに便乗するって大事だなと(笑)
――いやいや、バズを再生につなげる力がすごい!(笑)尊敬します。ただ、実際、そのバズで数値ってどれくらい伸びたんですか?
再生数は4.6倍くらいになりましたね。リスナー数もかなり伸びました。
Spotifyでの順位もぐんぐん伸びていきました。バズ後すぐに37位になって。ただ一過性のものかなとも思ってたんです。だけど、次の日には25位、20位……とあがっていった。20位くらいになると、僕がいつも聞いてる芸能人がやってるラジオ番組とかと並んで、すごく興奮しました。だけどそれすらも追い越していって、13位、10位……最後には7位まであがりました。10位以内には、プラットフォーム自体が推しているオフィシャルの番組も沢山ありますから、そういった番組にTwitterのバズの力で並べたのはすごく嬉しかったですね。
今はその時の順位からは少し下がってますけど、でもバズる前から比べるとすごくランクアップしました。実は、広告とか人気のあるパーソナリティを使って、勢いよく上位にランクインする番組って他にもあるんです。でも、そのランクがなかなか続かないのがPodcastの厳しいところ。宣伝期間が終わるとランク圏外に順位が落ちてしまう番組も少なくないです。一度話題になっても定着しないと意味がない。
そういう意味では、いまだに上位にランクインしたまま順位がキープされているのは、こだわって番組を作っている身としては、リスナーに番組の内容が受け入れられている気がして、すごく嬉しいですね。
10代に大人気の怪談話。人気の背景にある「怖い」音声をつくるためのこだわり
――ちなみにどんな人が聞いてるんですか?
Spotifyのデータを見ていると、20代までで50%、10代だけでも30%なので、若い世代が多いですね。あとは女性の方が多いです。怪談を売りに来るのも、女性の方が多いんですよ。
――へえ!若い人怪談好きなんですね。なかなか若い人に刺さる番組作り難しい中ですごいです。やっぱり時間帯は夜聞かれてるんですか?
特に時間帯は偏ってないですね。意外とみんな色んな場面で怪談聞いてるみたいです。とある人は、犬の散歩しながら聞いてたらしいんですけど、ちょうどこの番組の第一回が犬の散歩中のエピソードで。「もう犬の散歩が怖くて仕方ない」という人もいました(笑)
――リスナー数や再生数が伸びたことで、何か変わったことはありましたか?
オンラインで集まってくる怪談の数が増えましたね。僕はそれがすごく嬉しくて。大人気深夜ラジオだって、はがきを送っている人はごく一部なわけで、ほとんどが聞いているだけの人。ユーザーが番組を聞いてくれているだけでなくて、アクションして参加してきてくれるってすごいことだと思っているんですよね。
――番組づくりでこだわっている部分はありますか?
聞いてて”二回面白い”と思ってもらえるように作ってます。
一回目は、怪談自体が、体験者が実際に体験している怪談だからオリジナリティ溢れていて面白いので、それを思う存分感じてもらうために工夫してます。二回目は、その怪談について、宇津呂さんが解説をしてくれるんですよ。それで、「この現象ってこういうことだったのか」という学びがある。
例えば、「どうして昔事件があった場所におばけがでるのか、それは場所にも記憶があるからではないか?」とか。普通に暮らしていると知らない考え方に出会える。怪談を沢山聞いてきた宇津呂さんだから話せる解説がある。Podcastのリスナーって知的好奇心が高い人が多いと思っているんですよね。日本では、英語学習のための番組が伸びているわけなので特にそうだと思うんです。だから、この番組もただ「怖い」だけで終わらずに学びの要素を入れるようにしています。そうするときっと、印象にも残ると思うんですよね。
――すごい。私もPodcastやっているので、勉強になります。昆さんはサウンドエンジニアでもありますよね。番組の企画内容以外で、音作りなどでこだわった部分もあるんですか?
音声だからこそ「頭の中で想像できる」ということを大切に作ってます。
エピソードは実録の音声なので、一般人の体験者が話してるんですけど、一般の人ってみんな、どうしても畳み掛けるように早口に話してしまう。だから一個一個に細かい間を入れるように気をつけたり、SEを使って想像を掻き立てるようにしてますね。
例えば、「心霊スポットに遊びで言ったら、自転車が通り過ぎていったんです」という話があったら、自転車の音をLとRで分けて出るようにして、本当に通り過ぎているふうに聞こえるように工夫したり。やっぱり怪談って、頭の中で絵が想像できたときに「怖い」って思うわけじゃないですか。だから、ドラマを作るみたいに、映像が浮かぶような音声体験をつくるようにしてますね。
――こだわりが詰まってていい番組ですよね。これから夏がやってきますが、何か仕込んでいる企画はあるんですか?
すでに始まっていますが、プロの怪談師の人に怪談を話してもらう企画がはじまります。怪談師というのは、日本中で怪談を集めて話している人。いつも以上に臨場感あふれる話が聞けると思います。
全部で4エピソード公開する予定で、ちょうど日本のお盆の季節に全部揃う予定なので、聞いてほしいですね。
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『100円で買い取った怪談話』では、すでにプロの怪談師が怖〜い怪談を話すエピソードが公開されています。蒸し暑い日本の夏、今年は是非、耳から恐ろしい怪談を聞いて、涼しい気分になってみてくださいね。
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